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中村勝哉さん「お別れの会」(3)

現在の晶文社社員の方々は「お別れの会」の運営にあたられていた。営業や製作、総務、経理などには、ぼくのいたころから在籍されている方も多い。その後にくわわった方には初対面のご挨拶をする。いずれのばあいも、「今日はありがとうございます」とていねいに御礼をいわれ、恐縮する。

ぼくはといえば、在籍時代は与えてもらうばかりでさっぱりお役にたつことはできず、晶文社を離れてからずいぶんと時間がすぎ、さらにじぶんでも予期せぬ展開も手伝って、とうとう職業編集者ですらなくなった。全然ダメダメな元社員であるのだが、それでもこの出版社に愛着をもつ気持ちは、以前となんら変わらない。

「お別れの会」に参集のひとびとは、語らいと献花台の白いカーネーションを残し、三々五々帰途についた。人影まばらになった会場では、実行委員会や社員の方々が、ぽつりぽつりと献花台の前にたたずみ、遺影に向かって手をあわせてはじめた。なんとなく去りがたい気持ちを抱えたままその場にとどまっていた元社員たちは、黙ってそのようすを見ていた。

だれかが記念撮影をしようと言いだした。現社員も元社員も入り混じって、遺影の前にならんだ。カメラに向かって、「中村さん、ちゃんと入ってるか?」と声が掛かった。「おお」。三回、シャッターが切られた。

二日後、友人である元同僚からメールが届いた。
「中村さん、うらやましそうに、ずっとみんなを見ていましたね」
たしかに、そんな表情だった。

さようなら、中村さん。ありがとうございました。
ご冥福をお祈りします。

(この項、終わり)