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集中力を高める方法?

この夏、帰省や所用で出かけたほかは、おとなしく家にいる。いつまでもバカ暑いせいもあるが、それだけではない。久しぶりに少し長めの論文を書くためである。

朝、家族がそれぞれの行くべき先に出かけるのを見送ったあと、仕事にとりかかる。一日冷房に浸っていると気管支が腫れて息苦しくなるし、そもそも仕事をしている居間にはエアコンがない。だから、この夏のぼくの友だちは、一台の扇風機だ。こいつが、むりやり歯医者に連れてこられた子どもみたいにひたすら首を左右に降りつづける横で、パチリパチリと PowerBook のキーボードを叩くのである。

エライ先生であれば、ここで颯爽と「バリバリ仕事をする」などと書いたりするところだが、ぼくのような「なんちゃって研究者」のばあい、そう格好よくはいかない。とりあえず、もっとも卑近にして深刻なモンダイが、集中力である。ぼくの性分からして、いったん集中モードに入ってしまえれば、あとはずっと書きつづけられる。だが、そこに至るまでの道のりは険しい。大気圏への突入回廊をわずかでも逸れれば宇宙船が摩擦で燃え尽きてしまうように、ちょっと間違うとなかなかうまく集中モードに入っていけないのだ。一行書いたらメールのチェックをしたくなり、ネットで関係のあることないことむやみに検索してみたり、机のまわりを片付けしはじめたり、録画しておいたジェフ千葉の試合を観てみたり。ああ、こんなことではいかん、とじぶんの軟弱をさらになよなよと責めるのだが、そうしたところで、肝心の原稿は一向に進展しない。そうこうするうち、子どもたちを迎えに行く時間がやってくる。

そこで、これも本末転倒であることは承知のうえ、「集中力」で検索してみた。すると、この手の話は自己啓発系というか、ビジネス・ノウハウ系の定番であることがわかった。大筋で共通するのは、集中力を高めるじぶんなりの儀式をもつのがいいという内容なのだが、なかには飲むだけで集中力が倍増するサプリメントとか、これを聴くだけで集中力がメキメキ高まるメンタルトレーニングCDとかまであって、こんな商売で食べていけるのか、いや意外に儲かるのかもしれないなどと、他人事ながら考え込んでしまった。ちょうど英会話のあり方に似ているのだ。多くのひとが、本気で悩んでいるようにも見えるし、悩んでいるその状態を愉しみ、消費しているようにも見える。

さて、いくつか見たなかで、地味ながらまっとうに役立ちそうな方法を紹介しよう。一時間を48分と12分のふたつのセッションに分割する、というやり方だ。まずタイマーを用意して、48分後に鳴るようにセットする。そして仕事を開始する。これが第一セッションだ。48分後にタイマーが鳴る。鳴ったら、どんなに仕事がはかどっていても、あるいはいなくても、そこでいったん、その仕事は休止する。つづく12分間の第二セッションは、休憩をしてもいいし、別の仕事をしてもいい。とにかく、第一と第二のセッションで、作業の内容を変えることが肝心らしい。目標は分割せよというスローガンを、時間に応用した方法といえばいいだろうか(興味のある方は調べてみてください)。

試しにじぶんでもやってみた。時間で区切ることで中身にメリハリをつけられ、それがリズムを生むという効果は、それなりにあったような気もする。「型から入る」のは、つねに「正しいこと」を教える世間の識者のあいだでは評判が悪いが、あんがい物事の王道に近いかもしれない。

──てなことを気分転換に12分間で書いてブログにアップできれば美しいのだが、現実はそう甘くはない。これに貴重な48分間をまるまる費やしてしまった。つぎの48分間は、また論文へ復帰せねばなるまい。しかしその前の12分間、なにをすればいい?