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2007-09 Archive

デザインのミニマリズム

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新しいApple Keyboardを買った(英語版)。すぐに気に入った。さっそくもう一個買ってしまった。デザインは、ごらんのとおり。現在世の中に存在するパソコン入力用キーボードのなかで、ハッピーハッキングをちょいと別にすれば、ほぼ究極のミニマリズムだといえる。

軽い。薄い。測ってみた。もっとも高いところで、机面から17-8mmだ。全体はアルミの板一枚。そこにプラスティックのキートップが生えている。MacBookのキーボードにそっくりの形状だ。キータッチまで似ているから、好みは分かれるだろう。コストが許せば、MacBook Proみたい、キートップもぜんぶアルミという手もあったかもしれない。それでも総合的に見れば、このキーボードはよくできている。

思えばこの15年ばかり、Appleの製品のなかで、キーボードはもっとも軽んじられてきた。SE/30のキーボードはメカニカルで独特の手応えがあったが、以後の製品は、どれもこれも、ひどくがっかりさせられる代物だった。プラスティックの外装はいかにも安っぽく、タッチはベコベコ、ヘナヘナだった。直近で販売されていた製品は、キーを押してもまっすぐ下向きに入らず、変なふうに引っかかるありさまだった。初代iMac以来の「伝統」なのか、台座には透明なポリカーボネードがかぶせてあった。そのぶん分厚く、むやみに重かった。Mac本体における工業デザインのレベルの高さからすれば、そもそも機能レベルからして信じがたい低水準だったといわねばなるまい。「ジョナサン・アイヴ」という名札をぶら下げた出来の悪い美大生がデザインしていたんじゃないか、と半ば本気で疑っていた。タイプするたびにキーが引っかかり、台座が厚いので長時間つかっていると手首が痛くなる。そうして、無用のイライラがつのる。けっきょく外付けキーボードは取り外し、PowerBookのキーボード(こちらのタッチはそれなりに好きだ)から入力、なんてこともしばしばあった。手がかかるぶん愛着が湧くということも、まるでなかった。そういう製品ではなかったのだ。

10月には、ほぼ同じデザインのワイヤレスモデルが発売されるという。テンキーが省かれるが、それも買ってみるつもり。モダンデザインの理念は、なんだかんだいわれながら、いまだそれなりに有効性をもちつづけているようだ。


中秋の名月@市川

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今宵は中秋の名月である。きれいに晴れた夜空に、お月さまが姿をあらわした。子どもたちはお月見団子を用意して、デッキでお月見だ。虫の声が彩りを添える。暑かった夏も、そろそろ終わりかな。


秋のスクリプタ

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『Scripta』第5号が届いた。創刊一周年である。パプリカのような、鮮やかな黄橙色の表紙。黄葉のイメージなのかしら? 藤崎編集長によれば、創刊二年目は、カラフルな路線で攻めてみたいとのこと。紀伊國屋書店各店舗で配付中だ(無料)。

ぼくの連載「機械と身体の縫合域」は「買物する身体」がテーマである。川本三郎さんの「バザール都市=東京」をヒントに、これに「スーパーマーケット都市=名古屋」(=わが故郷なのだが:笑)をぶつけ、「買物」という日常的実践における身体性のあり方について論じている。

明日から、秋学期開始である。


東北豪雨を走る

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すでに午後8時を過ぎていた。今月就航したばかりという高速フェリーは、途中けっこう揺れながら、1時間遅れて青森に到着した。

市内はさほどでもなかったが、青森道に入ると急に雨脚が強くなった。速度を抑えつつ、小一時間走った。碇ヶ関あたりからは、ワイパーを最速にしなければ視界が確保できないほどだった。秋田県の小坂ICまで来た。ここから先は通行止めだった。「申しわけありませんが、一般道におまわりください」と録音案内放送が憑かれたようにくり返している。雨降りの夜間に一般道で奥羽山脈の峠を越えなければならない。まいったなあ。つぶやいてはみるものの、しかたない。

R282を南に向かって走る。鹿角の先まで来たところで、カーナビが「コノ先、冠水ノタメ通行止メデス」と言いはじめた。ビーコンでVICSの道路情報を受けたのだろう。冠水? どういうことだ? しばらく迷ったが、そのまま先に行ってようすを聞くことにした。きっと災害時には、こうやって被害が拡大するのだ。3kmほど行った交差点に、警察が出て道路を封鎖していた。

雨合羽を着たひとりの警官が近づいてきた。「どこさ、いぐの?」

東京まで帰るのだが、東北道が閉鎖されているので一般道で、まずは盛岡まで出たい。そう説明した。すると、その若い警官は言った。R282はここから先へは進めない。八幡平や大館に抜けるルートも通行止めだ。盛岡へ抜けるなら、十和田湖のほうをまわっていく道しかない。そういって、かれはR103からR104へ抜ける道を教えてくれた。

カーナビをスクロールしてみる。たしかにどのルートも通行止めを示すバッテン印だらけだ。唯一無印の道が、教えてもらったルートである。十和田湖の南麓をトラバースするような道どり──ってことは、山道なのか。

R103は大湯温泉を抜け、ぐいぐいと高度をあげていく。道はところどころ細くなる。灯りはほとんどない。フロントガラスに雨粒が音をたてて打ちつけてくる。巨大なシャワーの蛇口に顔を向けているようだ。風は猛烈である。周囲の木々が烈しく揺れて道路の上に覆い被さる。前後にクルマはいない。時折対向車がやってくる。この山中を踏破してきたとは信じられないほど長大なトラックが、尻に火のついたような勢いで暗闇のなかから現れる。R104に入る。ヘアピンカーブが連続する。ハンドル操作を誤らぬよう、ひとりで「左、ヘアピン」と声をだして確認しながらクリアしてゆく。三戸に入ると、赤色灯を回転させながら走るパトカーに追いついた。救急車を先導していた。

R4に出た。二時間ほどかけて遠回りしたうえに、青森県に逆戻りだ。深夜のR4を八戸道二戸ICへ向けて走る。しかし、八戸道もまた通行止めだった。この先、どこまで高速の通行止めがつづいているのか。カーナビにも先の情報は十分に表示されないので、よくわからない(北上江釣子まで通行止めだったようだ)。

盛岡は100km先だ。北海道と違い、こちらの一般道は、走っても走っても、なかなか進む感覚が得られない。青森を出発して以来ずっと運転しどおしだ。疲労を実感しはじめた。どのみち今日中に市川へ帰れるはずもない。岩手町沼宮内まで来た。道の駅・石神の丘があらわれた。ここにランクルを止め、車中泊することにした。すでに日付は変わり、午前1時を過ぎていた。

目が覚めたら8時半だった。ランクルのまわりは、地元の農家のひとたちの軽トラでいっぱいだった。道の駅で地元野菜の販売をおこなっている。その店開きの準備のようだ。開店時間より少し早かったが、許しを得て店内をのぞかせてもらった。大玉五つ入りのリンゴ(つがる)を一袋買った。

昨夜の秋田が記録的豪雨であり、ひどい災害をもたらしていた。そのことを教えてくれたのは、再びR4を走りはじめた車中でつけたラジオだった。


島牧の休日

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函館での仕事が終わり、島牧まで走った。ネイチャーイン島牧ユースホステル。一年ぶりだ。ガンゼさん、オシメさん、俊輔の顔を見、ごはんをたべてビールを飲んだら、まだ8時半だというのに眠くなり、そのまま11時間眠ってしまった。

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遊んでいられるような境遇ではないのだが、せっかく島牧に来たのなら、せめて二泊はしたい。昨年は子どもたちを連れて狩場山に登ったが、今年はひとりだ。港へ行って、もっとも簡単だというチカ釣りをした。

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竿はガンゼさんに借りる。仕掛けは近所の釣具屋で調達。日曜のせいか、港は静かだ。オキアミを巻いて、竿を投げる。すぐに一匹かかる。チカは使いさしの鉛筆のような魚で、ワカサギに似ている。うまいひとだと、同時に数匹釣りあげる。ぼくの釣果は、一時間ほどで4匹。一度、ボラのみたいな大きな魚が引っかかったが、釣り針を食いちぎって逃げられてしまった。そのあと、チカよりひとまわり大きな小魚がかかった。あとでガンゼさんに、サバの子どもだと教えられた。

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島牧にはいくつも温泉が湧いている。かつてユースから歩いていけた漁り火温泉は海岸べりで眺めがよかったけれども、いまは休館中。宮内(ぐうない)温泉、千走川温にもこれまで何度もかよった。いま気に入っているのは、モッタ海岸温泉だ。しょっぱい茶色の温泉で、温度も高い。ラジウムを多く含み、泉質は二股ラジウム温泉に似ているらしい。大きくはないけど露天風呂もある。浸かると、目の前は海だ。眼鏡をはずすとなにもわからないのだけれど。

島牧は、ケータイは通じるが、PHSはダメ。PHSをつかう用事が生じた。寿都まで行けば通じるかとおもい、30km走ったが圏外。黒松内も圏外。けっきょく、電話をかけるためだけに長万部まで走った。往復130km。

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昨年つくってもらった椅子。座面のペーパーコードがほつれてきた。今回ランクルに積んでもっていき、制作者である俊輔に見てもらった。編み方が少し甘かったといって、一晩で編みなおしてくれた。

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ユースの広い敷地の一角は菜園だ。ここで無農薬でいろんな野菜をつくっている。帰りがけ、たわわに実った枝豆を、少しお裾分けしてもらった。島牧も、この夏は暑かったという。それでもさすがに、もう枝豆も終わりに近い。


Char@炉ばた 俺ん家

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函館滞在中は「炉ばた 俺ん家」に通うことに決めている。五稜郭近くにあるこの店は、昨年見つけた。店構えも内装もメニューも、なにもかも完璧な炉端焼きの店なのに、流れる音楽はエリック・クラプトンだ。それを狙いでやっているのでないのが、またいい。

毎晩、音楽のメニューも用意されている。今回は、マスターお気に入りの番組の録画。「Char Meets ????: Talking Guitar」という、フジテレビがCSで放送している番組だ。

チャーが気になるギタリストをゲストによび、トークとセッションを繰り広げる。といっても、前半ひたすらチャーがしゃべりまくり、途中からひたすらふたりのセッションがつづくといった風情で、かなり濃い。ゲストによって、演奏するセッションのテイストがまるっきり異なる。渡辺香津美の回はずいぶんジャジーだし、泉谷しげるのときはひたすらストロークである。坂崎幸之助の回はたのしく、ジェイク・シマブクロの回は圧巻だった。

観ていて愉しいが、つくっているほうも愉しいだろう。とはいえ予算はなさそうだし、放送も不定期らしいから、苦しいことも多いに違いない。苦しいが同時に愉しいという葛藤状態のことを、ある先生が「くるたのしい」と表現した。この言葉は、この番組の作り手たちの気分によく当てはまるのではないか。

くるたのしさが発するオーラを、地上波のテレビ番組から感じることがなくなって久しい。この番組の印象にいちばん近いものはなにか。ぼくの感覚のなかで探しだすとすれば、それはある種のラジオ番組か、ある種の雑誌である。


谷地頭温泉

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谷地頭温泉に寄ってきた。北海道に長逗留しているのに、温泉に入るのはまだ二度目だ。遊びに来たのじゃないから、しかたないけど。

函館の銭湯はどこも温泉なのだという。だとすれば、函館山の麓にある市立の谷地頭温泉は、その親玉だ。露天もあるが、むしろ内風呂が気持ちよい。明るくて、天井が高い。少ししょっぱい茶色の湯に浸かる。熱い。「低温」の札が出ている浴槽ですら43度だ。

長風呂の趣味はないので、適当に切りあげる。座敷の休憩室がある。窓が開いている。風は乾いて肌にやや冷たく、潮の匂いがする。飲むのは、もちろん牛乳である。


デジタル・ストーリーテリング@函館

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函館にいる。集中講義のためだ。今年もまたデジタル・ストーリーテリングの手法でもって、30-120秒ほどの映像作品制作をおこなっている。制作そのものが目的ではない。制作の過程をとおして、メディアリテラシーを養うことに主眼がある。

昨年はグループ単位での制作だった。今回は、より正調だ。グループで話しあいながら進めるものの、作品はひとりずつ制作する。3月のウェールズ視察での収穫をもとに、さっそく実践してみたというわけである。

観光目線ではなく、じっさいに生活する大学生の視点からみた函館の街を描く。今日で三日目、いよいよパソコンでの編集作業の段階に差しかかった。波瀾万丈が常であるぼくの授業としては、信じられないほど順調である。どういうこと?


G8サミット、オルタナティブメディア準備会

札幌では偶然、明学でご一緒している気鋭の映画研究者・平沢剛さんにもお会いした。その平沢さんからのお知らせです。ちなみに、ぼくはまだ北海道にいる。

■■■■洞爺湖G8サミット 第一回オルタナティブメディア準備会■■■■

2008年7月7日から9日にかけて、G8サミットが北海道・洞爺湖で開催されることがすでに決定しています。それをうけ、札幌では9月21日にG8サミット市民フォーラム北海道が設立され、東京でも既に2008年G8サミットNGOフォーラムやG8連絡会が発足し、来年に向けた取り組みが着々と進んでいます。

このようにG8に向けて様々な運動のネットワークが立ち上がるのに合わせ、様々な取り組みや主張を伝えていくオルナタティブなメディアのネットワークづくりが早急に求められる情勢にあります。こうした問題意識のもとに、先日いくつかの独立系・市民系のメディアグループが集い、有志で「G8オルタナティブメディア準備会」が立ち上げられました。

その会合においては、北海道や日本各地で行われるであろうG8関連の行動、集会、フォーラムなどを、それぞれの立場や視角から自由に情報発信をしていくために、国内外に開かれた共同のプラットフォームの設置を具体化していこうという提起がなされました。

そこで本準備会では、G8に関心を持つすべてのメディア関係者が集まり、それぞれの意見を持ち寄り、メディアの共有・共同をどのような形で行っていくか議論するための第一回準備会を開催したいと考えています。ぜひ、ご参加下さい。

提言:
安田幸弘(レイバーネット日本)
土屋豊(VIDEO ACT!)
松浦哲郎(世界コミュニティラジオ放送連盟アジア・太平洋地域)

日時 9月23日(日) 18:00〜21:00
場所 渋谷勤労福祉会館 集会室第一洋室
住所 東京都渋谷区神南1-19-8
電話 03-3462-2511
地図 http://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/sogo.html

主催 G8オルタナティブメディア準備会
連絡先 g8am@klact.co.jp


市民メディアサミット@札幌

初めての参加だった。とくに知り合いもいないまま、いわば飛び込みで参加したのだが、なかなか愉しく、勉強になった。運営にあたった事務局や関係者の方々に感謝したい。

もちろん、すべてオッケーというわけではない。課題も感じられた。全体に、マスメディアに対抗するオルタナティヴという構図で語られる傾向にある。しかし、それって、けっきょくマスメディア中心の20世紀型のメディア編制を前提していることに等しい。むしろ必要なのは、規模の大小をもって中心─周縁の構図に置き換えるのではなく、いずれのメディアも等価に位置づけられるような理論的構図だろう。ただしそれは、実践家のひとたちだけに押しつけられることではなく、研究者もまじえた共同作業でなければなるまい。

いくつもある分科会のうち、3つを聞いた。いずれの参加者も、どういうわけだか大会全体のそれに比して少なかったが、参加者の多寡と内容の良し悪しは必ずしも相関しない。

「デジタル時代こそ、活字メディア=紙媒体が必要だ!」と題されたセッションでは、情報誌を発行する札幌、函館、釧路、仙台のNPOの取り組みが発表された。市民メディアといえば映像系が多いので、紙媒体をとりあげること自体が、なかなかユニークだった。個別の事例も興味深かったが、あいにくその後の討論は展開しきれない印象が残った。「ネットか紙か?」という図式の議論にはまり込んでいってしまったからだ。この手の議論はすでに90年代にさんざんやって、まるっきり不毛であるという教訓を得ている。むしろ重要なのは、媒体(メディア)の移り変わりというより、媒介作用(メディエーション)のあり方だ。ネットか紙かという二項対立図式ではなく、出版(パブリッシュ)するとはどういうことか、わたしたちが通常考える出版をどこまで拡げて考えられるかという挑戦である。

そのようなメディア論的関心から見て印象的だったのは、釧路の事例(「じゅう箱のスミ」)である。とくに、その配付方法だ。もともと新聞に折り込んで3万7000部を発行していたものが、諸事情によりそれが適わなくなった。その代わり、広告主や読者がみずから名乗りでて、いまでは2万部をそうした人海戦術で手配りしているという。これを、非産業的な出版物であるがゆえに物流システムに載せられないことに起因する代替と捉えてはいけない。物質が、具体的な人間の手によって届けられるということに意味が発生することに注目すべきである。そこには不可避に儀式性が立ちあらわれてくるだろう。それが、メディア・コミュニティを形成するのである。

それにしても、こういう場に来て大物ぶるおっさんは、それがいくらありふれた生き物だとはいえ、どうにかならんものか。


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