鮟鱇

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北海道の島牧から宅急便が届いた。平ぺったい発泡スチロールのトロ箱だ。「なんだろう?」。「あ、わかった! 鮭だ」。子どもたちはてんでに勝手な臆測を口にする。この時期、鮭ということはあるまい。ガムテープをはがす。蓋を開ける。すると、なかから真っ巨大な「?」形の黒い物体があらわれた。騒いでいた子どもたちは、きっとかれらの想像の範疇を越えていたのだろう、急に沈黙した。それは、鮟鱇だった。

鮟鱇が島牧で獲れるとは知らなかった。全長50cm以上ある。鮟鱇鍋にしたら何回分になるだろう。うれしい。

よろこんでばかりもいられない。丸ごと一尾ということは、さばかねばならない。《あ》は魚をさばかないから、ぼくの仕事だ。鮟鱇は好きだが、スーパーマーケットで鍋用にパックされたものを買ったことしかない。ぐにゃぐにゃしているので吊るし切りにするということは聞いていた。むろんそんな道具がわが家にあるはずもない。のみならず、吊るし切りをした経験はない。現場を見たことすらない。強いていえば、昔『美味しんぼ』で読んだことがあるだけだ。こんな状態で、この巨体をさばくことができるのか。

気をとりなおして、ふつうの魚と同様に、まな板上でさばくことにした。それにしても、まさか人生のうちで鮟鱇をさばく日が来るとはおもわなんだ。ゴツゴツした巨体を裏返しにする。口に生えている歯が手にあたると、バラの刺のように痛い。腹にはその外見に似あわず、赤ちゃんが両手を拡げたようなかわいらしい格好をした腹びれがついている。その少し後ろ、の肛門のところから、あごに向かって包丁を入れる。内臓が詰まっている。肝・腸・胃袋くらいはなんとか識別できるが、あとの部位はよくわからない。黄色く透き通った球形のものもあった。あれはなんだったんだろう? 中身さえ出してしまえば、あとは気が楽だ。鱗を引く必要がないから、身を骨ごと適当にぶつ切りにすればいい。ひととおり終わるまでに、一時間は要したのではないか。

さばいた鮟鱇は、どぶ汁ふうの鍋にして頂くことにした。ここまで来たら──ということで、あん肝にも挑戦してみる気持ちになった。さっそく調理法をネット検索し、数件のサイトを見つける。ところが見比べてみると、いずれも微妙に調理法が異なる。どれがよいのか判断しようがない。「エーイ、なんとかなるだろう!」と適当に折衷することにした。

別段むずかしくはない。血合いをとってよく水洗いし、塩をしてしばらくおく。塩を落として酒を振り、アルミホイルでくるんで40分ほど蒸す。冷ましたのちスライスして、好みで分葱や刻み葱を載せ、ポン酢で頂く。さっそく口に運んだ長男が、「うん、おいしい」と言った。当然かれの人生のなかで初めてのあん肝だったはずだ。じぶんでも食べてみる。おいしい。

こうして2008年は、鮟鱇づくしで幕を開けることになった。島牧のみなさん、どうもありがとうございました。