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クルマにお経

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京成電車にごろごろ揺られて中山法華経寺に行った。

お詣りを済ませて境内を歩いたら、線香の匂いのするほうから塩辛声の読経が聞こえてきた。声のするほうを見ると、ねずみ色のジャンパーを羽織ったおじさんが、お坊さんの前で首をうなだれていた。家族とおもわれる3名ほどが、やはり同じような格好でいた。そして一家のならびの真ん中、つまりお坊さんの正面に鎮座していたのが、グレーのプリウスだった。「車祈祷所」という木製の看板がかけられていた。

盛大に焚かれた線香と、お坊さんのありがたいお経とが、クルマの隅々にまで行き渡るように、という配慮ゆえだったのだろう、そのプリウスはドアというドアを全開にしていた。左右の乗降用のドアはもちろん、ボンネットもハッチバックも、開け放たれ、荷台に積んだ段ボールに「NITTSU」と赤く印字されているのがはっきり認められた。すっかりあっぱっぱになったその姿は、おじさんたちの同様に首をうなだれているというよりも、飼主の足許で、がまんできずにうれしそうに尻尾を振りつづける子犬のように見えた。

「クルマの祈祷というのがあるなんて、生まれてから四十年、今日初めて知った」とぼくが言った。すると、隣を歩いていた次男が言った。「ぼくも生まれから九年で初めて知った。あ、そうだ。今日の日記に書いておこう」。そこでかれの日記には、こう記されることになった。「ほけきょう寺で見たこと。車におぼうさんがおきょうをよんでいた。」