映画『築地魚河岸三代目』

映画『築地魚河岸三代目』(松原信吾監督)を観た。公開二日目。われながら画期的な早業である。

周知のとおり、人気マンガの映画化だ。マーケティング・オリエンテッドでリスクを極力抑えたい最近の邦画の定番パターンである。じっさい、いかにもいろんな思惑のなかで製作されましたという感じが、スクリーンからも伝わってくる。

出来は、正直いって冴えない。テレビ局映画が幅を利かす邦画界のなかでは、まあ平均的といえるかもしれないが、そんなレベルで満足してもらっていては困る。

主要人物は場当たり的に動いているようにしか見えず、台詞もぎくしゃく。演出は大ぶりで、構図やカットのつなぎはしばしば不安定である。音楽は、それ自体の出来はともかく、画面と噛みあわない。物語構築の面でいえば、基本的に人情話なので、その定型をきちんと踏まえてくれなければ始まらないのだが、どうも別の方向へ流れがちだ。せめて築地市場の文化の具体的なところをもう少し明確に描いていれば、後半以降の展開に説得力が出たのではないか。

役者は全体によい(個別にはむろん凸凹はある)。要所に芸達者を配して、押さえるべきところを押さえている。本作がかろうじて映画としてもっているとしたら、それはかれらに依るところが大きい。

ついでにいえば、「プログラム」という名前で劇場で売られているパンフレットは意外に充実している。皮肉というべきだろう。肝心の本編もこんなふうだったらよかったのに──というのが率直な感想だ。キャストはもちろん、スタッフも経験豊かな面子で固められている。かれらの力を十分に引きだして組織化することができていれば、素材はよいだけに、佳作に仕上がっただろう。

公開直後にもかかわらず、早くもシリーズ化が決定しているらしい(本編終了後に特報が出る)。寅さん・釣りバカの後継企画として期待されているということか。松竹にしてみれば、釣りバカ程度でもシリーズにしてみたら長寿化して、定期収入源を確保できた「成功体験」がある。あれでイケるなら本作でもイケルと踏んだのかもしれない。でも、そんなことでいいのか?

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