海まで自転車で

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秋めいた風の吹く午後、海まで自転車で走ってみることにした。

江戸川左岸(東岸)の土手ぞいには250mおきに標識がたち、海までの距離が記されている。15-6kmも走れば河口に達するはずだ。

鉄道や道路の橋をいくつもくぐってゆく。橋下はところどころホームレスのひとの居住地になっている。段ボールハウスどころか、ベニヤ板でがっちり囲って本格的な「家」が建築されていたりする。ハンガーに薄茶色のジャケットを吊るし、箒で「家」の前を掃いているひとがいた。

やがて川は大きく二つにわかれる。向こうが旧江戸川、手前の広いほうが江戸川。どちらにも水門がある。前者には江戸川水閘門、後者には行徳可動堰。どちらもつくられてからけっこう年月がたつ。適度に風化して風景に融けこんでいる。

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「海から」の標識の原点がどちらの河口に設定されているかはわからないが、きょうは本流の川岸をゆく。標識には「江戸川放水路」と記されるようになる。20世紀初頭に開削されたという。京葉道路をくぐると、繋留中のプレジャーボート・漁船・屋形船が川面を埋め尽くす。井の頭公園のボートみたいのがつながれ、「貸しボート」の札まで出ている。こんなところでデート用というわけではないだろう。たぶん釣り客をあてこんでいるのだ。

土手は草刈りの真最中。となりは外環の工事用地だ。ちょうどいまごろ、強制収用に向けた説明会がひらかれているはず。対岸には行徳富士が見える。不法廃棄された残土の山である。標高37mというから、うちの近所にたっている「市川市最高地点」の標識に記されているのより高い。たいした富士である。左手にゴミ焼却施設を見つつとおりすぎると、もう湾岸道路はすぐそこだ。標識には「海から0.5km」とある。高速道路と京葉線の橋をくぐる。

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河口に到着。自宅からゆっくり走ってちょうど1時間だった。

ふつう「河口」と聞けば、そこで陸が終わり海がひろがっているさまを思い浮かべるだろう。だが、この河口はそうではない。海面に鉄骨で組まれた櫓が突きでているだけ。その先には垂直護岸で固められた埋立地が続き、その上を工場や倉庫が覆っている。

午後の東京湾の海は、そうした光景に両側をはさまれた隙間から窮屈そうに顔をのぞかせていた。そこからぼうぼうと猛烈な風が吹きつけてくる。立っているのもやっとというくらい。排気ダクトに顔を向けたみたいだ。対岸にうっすら霞んで見えるのは、市原あたりだろうか。

原子力空母が配備された日の東京湾は、そんなふうだった。