空気の港

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羽田空港のターミナル内に巨大な「空気のひと」がふんわり浮かんでいる。──メディアアーティスト鈴木康広さんと廣瀬通孝先生を中心とするプロジェクト、デジタルパブリックアート(DPA)の展覧会「空気の港」が、羽田空港内で開催中だ(11月3日まで)。

たまたま用事があったので、立ち寄ってみた。ターミナル1の地下「空気の広場」と名づけられたスペースで写真を撮っていると、デジカメのディスプレイの中のひとがお辞儀する。見ると、明学の学生である。ボランティアスタッフとしてお手伝いに来ているらしい。

ちょうど鈴木先生もいらして、案内をしてくださった。ターミナル1と2のあちこちに、埋め込まれるようにして十数個の展示がなされている。

「未来の足跡」という作品は、歩いてくる搭乗客の前に、これからじぶんが歩くであろう足跡が、本人に先行して映しだされる。未来の足跡を示す光はさほど強くなく、とくに目立つ説明板などがあるわけではないので、そこに作品があることにまったく気づかないひとも多いが、ときどき「あれ?」と頭上を見上げるひとがいたりする。

「木陰のスクリーン」という作品は、椰子の木みたいな恰好をしたベンチ。ちょうどよい堅さで、ちょっと寝そべってみたくなる。寝そべると頭上にプロペラがまわっていて、そこに鳥の姿がレーザーで映しだされる。あらかじめじぶんの搭乗便を登録しておけば、その鳥の横顔がじぶんの横顔になる。そして出発時間になれば鳥も飛び去ってゆく。搭乗客はそのころには機上のひとになっているから、じぶんの分身であるその鳥の飛び去るようすを直接見ることはできない。

保守管理のために学生スタッフが構内をうろうろしている。透明な「空気のひと」をかかえたスタッフが京急羽田駅のコンコースを歩いていたりするが、あんがい違和感なく溶けこんでいるのがおもしろい。

どの作品も、そこはかとなくユーモラスで、それでいながらきわめてクリティカルだ。鈴木さんそのものである。

10月30日(金)にはシンポジウムもひらかれる。僭越ながら、ぼくも登壇させていただく予定です。

DPAについて、詳しくはこちらのサイトから。

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