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映画『サディスティック・ミカ・バンド』

2007年の木村カエラ版ミカ・バンドのドキュメンタリー。すでに昨年DVDが発売されているが、大スクリーンで観るに越したことはない。シネカノン有楽町1丁目で、夜一回だけ上映中。加藤和彦追悼ということで、かれの音源を持参すれば割引になる。

演奏を見せ音楽を聴かせるだけではない。50-60代を迎えたミカ・バンドの面々たちの語る言葉が、存外ていねいに拾われている。そこが、よくあるコンサート中継番組と大きく異なる点だ。一夜のコンサートの記録ではなく、サディスティック・ミカ・バンドという現象を相手どろうとしていると理解すべきである。全体につくり手がでしゃばることなく、また商業主義に迎合するのでもなく、地道におじさんロッカーたちにアプローチしようとしている姿勢に好感がもてる。

加藤和彦が亡くなった直後にあらわれた追悼記事や番組は、もっぱらフォークルに焦点をあてていたようにおもわれる。ミカ・バンドや80年代ヨーロピアン・デカダン路線のソロアルバムなどは刺身のつま的な扱いである。その態度は、生涯をロックのひととして生きようとした加藤和彦の革新性や過激さをひどく稀薄化してしまっている。追悼企画のあり方として、今回のようなもののほうが好ましい。

ロラン・バルトの言ではないが、いまとなっては、もう涙なくしては観られない。この夜の観客は、ぼくを含めて6人だった。