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学舎

集中講義とゼミ合宿のあいまに、帰省した。そのついでに、安房トンネルをとおって平湯に寄ってみた。トンネルが開通したのが1997年という。もうそんな前になるのか。開通してから行くのは初めだというのに。

新平湯温泉とよばれるあたりには、ぼくのかよった高校の林間学舎があった。

ただの県立高校だったのだが、どういうわけか自前の学舎をもっていた。入学直後、1年生の6月に2泊3日だかで学舎に行く。修学旅行というもののなかった高校だったので、学年全体で泊まりがけで出かける行事といえば、けっきょく、この学舎だけだった。

もっとも、ぼくは任意参加の冬のスキー教室や、部活やらなにやらで数回は利用したとおもう。たしか卒業生も利用できたはずで、卒業後に何かの合宿で行ったことが一度くらいはあった。しかし、それ以来、訪れたことはない。

今回、とくにノスタルジアがあったわけでもなかったのだが、寄ってみることにした。高校時代の友人たちと最近たてつづけにFaceBook上で再会したりしたことも、少しは関係していたかもしれない。

ゆうに25年ぶりの訪問。はたして現在も存在するものかどうかさえ判然としない。

場所はよく覚えている。平湯から国道をくだってきて、川を渡ってすぐを入る。記憶にあるとおり、道路脇に木の柱でできた看板がたっていた。妙にピカピカしている。どう考えても四半世紀前から建っている柱ではない。もしや建て替えられたのだろうか。

細い道をずんずん奧へ入っていくと、木立のあいだから見覚えるのある建物が見えたきた。

学舎だった。

建て替えられたようすはない。ぼくが高校時代に訪れたのと同じ建物である。外装は最近塗り直されたようでもある。適切なメンテナンスがなされているらしく、古くはあるが、とりたてて傷んだり荒廃したりといった感じはない。のみならず、今日も利用者がいるらしい。食堂に灯りがともっているのが見えた。前庭の芝もシラカバの林も、四半世紀前の記憶ととくに変わっていない。そこだけ時間がとまっているような気さえした。

その日は近くの温泉宿で泊まった。宿の女将に学舎のことを訊ねてみた。つい先日も何かの部活が合宿で来ていて、昼間は近所の公民館で練習していたと教えてくれた。

宿の近くには棚田がある。そのあたりだったか近所の河原だったかで、蛍を見た記憶がある。《あ》も、やはりそのあたりで蛍を見たことがあるという。

そのことも女将に訊ねてみた。しかし、蛍? このあたりにいるかしら、という反応だった。