ナブユー

カーナビのような装置が好きらしい。運転時に感じている、じぶんが機械の一部になったような感覚が、よりいっそう強化されるからではないか、とおもう。

ディフェンダーを手に入れたとき、カーナビをどうするか考えた。この車には、コンソール部の形状の関係で、通常の車輌組み込み式のカーナビはつかない。手間をかけて工夫をすれば取付けられないわけではないのだが、そこまでするのも面倒だ。どうせ数年すれば陳腐化してしまうから、リプレイスのたびに大仕事になる。だいいち何十万円もする高級カーナビを買う資金的余裕もなかった。

そこでポータブル式のカーナビ(PND)にすることに決めた。パナソニック(旧サンヨー)のゴリラと比較検討し、ソニーのナブユーに決めた。買ったのはNV-U76VTという機種。写真の右端のやつである。

前のランクル80のときにつかっていたパイオニアのHDDカーナビ・カロッツェリアにくらべ、価格は1/6以下。だが使い勝手にはなんら遜色がなかった。

設置は簡単だ。ダッシュボードの上に吸盤式のクレードルを貼りつけ、本体を塡め込む。電源はシガーソケットからとればよい。

自車位置はきわめて精確。タッチパネルでの操作はリモコンよりも直感的だった。レスポンスが少し鈍いときもあるが、慣れれば問題ない。ルート設定も許容範囲だ。脱着可能なので、部屋に持ち帰ってルートをゆっくり検討しながら設定できる。VICSで渋滞情報がリアルタイム表示されるのも、PNDではナブユーだけだ。他社は、併売している組み込み式と機能が重なるのを避けるためなのか、意図的にビーコンのVICS機能を省いているという。

画面が小さいのだけが心配であったが、ディフェンダーのフロントウィンドウが小さいことを考えると、ちょうどよいサイズであったといえよう。

さらにワンセグ視聴、音楽や動画の再生もできる。だが、そうした諸機能については、ぼくはまったくつかわないので、どうでもよい。ぼくにとってナブユーはあくまで純粋にナビであり、その面でよくできた製品であったことに意味があった。

ディフェンダーを手に入れてからの2年近く、北は知床から、南は四国の剣山まで走った。その間76VTはつねにダッシュボードの上にあって運転をナビゲートしてくれた。リプレイスの時期が来たら同じナブユーの新機種に買い替えるつもりでいた。

ところが、先日ソニーから告知があった。カーナビ事業から撤退するのだという。スマホやタブレットをつかったカーナビアプリが普及しつつあり、将来性が見込めないから、という理由らしい。

たしかに、現状でもカーナビアプリをつかえば、iPhoneでもそれなりにナビ機能を満たすことができる。今後、噂されているミニiPadが出、それ相応のアプリや通信環境が整えば、あえてわざわざ専用機を購入しなければならない理由はどんどん縮小してゆくだろう。

カーナビが現在おかれている状況は、ちょうどワープロ専用機が消滅していったときに似ているような気がする。ただし、あのときよりも変化の速度はずっと速い。そう遠くないうちに、ぼくもカーナビ専用機のことなど忘れてしまっているかもしれない。

とはいえ、ナブユー撤退のニュースを知ってぼくが最初にしたのは、買い増しすることだった。2台も買った。

ひとつは、NV-U77VT(写真中央)。これまでつかっていた76VTの後継機種であり、実質的な最終版である。機能面では前機種と大差ないが、キャンペーンで地図の無料更新が可能である。

もう一台はひとまわり小さいNV-U37(写真左)。こちらは防滴仕様で、バイク、自転車、山登り、町歩きなどに適している。これら諸用途がメーカー公認となっているナビとして、総合的に考えて現状ではこの機種に勝るものは見あたらないようにおもう。とくにW800は、バーチカルツイン・エンジンで振動があるうえ、ネイキッドのため風雨にもろにさらされる。現状ではiPhoneあたりで代用する気にはとてもなれない。

というわけで、いま手許には3台のナブユーがある。もうしばらくはナブユーのお世話になりつつ、あちこちを走りまわってみたい。

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