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幌延深地層研究センターを見にゆく 2/4

15分ほどのブリーフィングのあと、見学者は2班にわけられた。ぼくはB班だった。見学には2時間ほど所要することが予定されていた。B班は後半の時間帯に入坑するため、前半はゆめ地創館の展示を見ながら解説をうける。ここでは、作業着姿の年配の職員の方が解説してくれた。

最初に、地下施設のジオラマを見た。東、西、換気の3本の立坑が一辺70mの正三角形に配置されている。これら3本の立坑を相互につなぐ形で、地下140, 250, 350mにそれぞれ横坑が掘られている。調査坑道だ。このうち今回の見学会では140mと250mの調査坑道に入ることになる。

ぼくが訪れた時点での立坑の掘削深度は写真のとおりであった。さらに深くまで掘削する予定らしい。

展示室の一画に、原子力研究開発機構が北海道や幌延町とかわした協定書が掲げられていた。幌延では研究するだけ、放射性物質は持ち込まない、研究が終了したら施設を閉鎖し坑道は埋め戻す、最終処分地にはしない、などといった約束がとりかわされている。

協定の内容は、見学会の説明で何度も強調されていた。最終処分地に立候補する自治体があらわれる見込みのないなかで、なし崩し的に幌延が選ばれてしまうのではないかという疑念の目で見られる傾向のあることは、当事者もよく承知しているようだ。この協定の履行の確認も、このPR施設の役割のひとつであるとされているのだという(協定履行の確認というのが具体的に何を意味しているのかはわからない)。

エレベーターで地階に降りる。このエレベーターには「Vertical Transporter 500」という立派な名前がつけられている。処分施設があると設定されている地下500mまでの下降を模擬的に体験できるというアトラクションである。実際には数メートル下の地階に行くだけなのだが、わざとゆっくり数分かけて降りる。その間に温度や湿度といった情報がパネルに表示され、地下深部が安定した(=地層処分に適した)環境であることを来館者にそれとなく教える仕掛けになっている。

地階にはパネル展示を中心に、地層研究の説明や調査坑道の実物大模型などがある。このあたりは200万年前に堆積した地層とのことで、化石などごろごろ出てくるという。それらの一部が展示されている。パネル展示のなかには、学会発表的なものも含まれており、それらは一般向けというにはやや敷居が高い。

シアターでは施設紹介の映像がながれている。幌延出身の女性が研究者としてこの施設に赴任してくる、という物語らしい。あいにく時間が足りず観られなかった。

地階からは通路をとおって、ゆめ地創館に隣接する「地層処分実規模試験施設」へゆく。ここは、高レベル放射性廃棄物が漏れだすのを防ぐための工学的な防護の仕組み(人工バリアとよばれている)にかんする実験施設であるという。展示施設も兼ねている。

人工バリアの実物カットモデルが展示され、それが三重に構成されていることが示されている。

ガラス固化した高レベル放射性廃棄物を、まず、オーバーパックとよばれている金属製の筒に入れる。金属の種類は検討中らしい。候補として炭素鋼、チタン、ステンレスがあげられ、ここでは炭素鋼バージョンの実物が展示されている。厚さ19cmと、分厚い。オーバーパックの製造工程を記録した映像も流れていた。これらは同館のウェブでも見ることができる(リンク)。

これをさらに厚さ70cmの緩衝材ブロックで固めてゆく。緩衝材ブロックはベントナイト(粘土)とケイ砂からできている。展示モデルにつかわれているブロックも実物だ。ラップで覆われているのは、湿気を吸わせないためであるという。ベントナイトは水を吸うと何倍にも膨張する。それによって水の浸透速度をできるだけ抑えることが期待されている。

カットモデルの背後には黄色い機関車のような巨大な装置がひかえていた。人工バリアを組み立てるための作業装置である。模型ではなく実機。実際にこの場所で使用されるのだという。

この施設で解説をしてくれたのは、先ほどの男性職員とは別の、事務服を着た女性職員であった。部署ごとに相互不可侵的に受け持ちが決まっているらしいのは、いかにも役所的である。とはいえこの女性、専門家というわけでもなさそうなのだが、参加者からの質問にも的確に答え、かなり詳しいようすだった。

そして解説の職員の方、および随行の研究者の方の話によれば、これらのバリアによって1000年間は防護効果を維持することをめざしているという。

1000年という時間を文学部的に言い直してみるならば、源氏物語が書かれてから現代に至るまでの期間にほぼ等しい。そんな超長期間にわたって強力な防護効果を人工的に維持するという構想自体が、夢のような話であろう。

しかし、逆にいえば、仮に目標どおりの機能を果たしたのだとしても、人工バリアの効能はせいぜい1000年間しか持たない、ということでもある。一方で、先述のとおり高レベル放射性廃棄物が無害になるまでには、人類史というより地球史的なスケールの時間を要する。最初の1000年が経過したあとも、その数倍から数十倍もの年月にわたり、管理保管してゆく必要があるのではなかろうか。そこまでの見通しが立てられうるものかどうか。

まだゆっくり展示を見ていたかったが、時間が押しているという。促されるままにエレベーターで展望室へ登る。西側に地下施設の地上部全景が見えた。

南に隣接してトナカイ観光牧場があり、トナカイらしき動物の姿が見えた。晴れていれば利尻富士の姿も見えるらしいが、あいにく雲が多く、判然としなかった。

その3につづく。