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『雪の断章』と『魚影の群れ』

ユーロスペースで相米慎二監督全作品上映(+α)をやっている。『甦る相米慎二』出版時の2011年11月に回顧上映がおこなわれた。それが世界の映画祭をめぐってきたのちの凱旋、という趣旨らしい。

相米再評価の気運がここまで高まったのは、関係者ならびに研究者のご尽力の賜物であろう。ぼくはたんなる一ファンにすぎないが、相米作品はなるべくなら映画館で、他の観客とともに大きなスクリーンで観たいとおもっている。このような企画はありがたいというに尽きる。

昨日『』と『』の2本を観てきた。公開時以来である。大学生くらいの若い観客の姿も目についた。

『魚影の群れ』は、大間のマグロ漁師の物語。この正月にも一億円の高値がついて話題になったが、原作は吉村昭で、物語らしい筋はあるものの、筋を追うというよりも、ひとつひとつの日々の出来事を淡々と重ねてゆく。緒形拳が漁船のうえでマグロと格闘するようすをとらえた長回しは、すばらしい。全編をとおして漁船のディーゼルエンジンの咆哮が背後に響いており、なんともいえない印象を残す。個人的には十朱幸代のシークエンスがいい。

話は逸れるが、現在建設中(といっていいのか?)の大間原発は、この映画の舞台となった大間漁港の南にある。町議会で誘致が決議されたのは、映画公開の翌年(1984年)だ。撮影時、原発はこの町の大きな関心のひとつであったはずだが、映画のなかにその痕跡を見つけることはできなかった。

いっぽう『雪の断章』は斉藤由貴さんの映画初主演作。全体に必ずしも作品の出来がいいとはいえないかもしれないが、個人的には何度かある豊平川の水に足を浸して斉藤さんが歩くショットがいいとおもう。俯瞰で撮ったり、下から撮ったり。斉藤さんの代表作を一本だけ選ぶとすれば、おそらく本作の次の『恋する女たち』(大森一樹監督)であろうが、この作品には『雪の断章』とよく似たショットが多くみられる。にもかかわらず、テイストはまったく異なっている。

ところで、同作の上映前に、思いがけず斉藤由貴さんのゲストトークがあった。おどろいた。まったく事前の情報を知らなかったからだ。先週ウェブを見たときは記載がなかったので、その後に決まったのだろう。

彼女の話が聞けたことは個人的にはうれしい出来事であった。時間は15分ほどだったろうか。じぶんの言葉で語ることのできるひとという印象であった。せっかくの機会なので、聞き手の方にはもう少し彼女の話を引きだしてもらえると、なおよかったのだが。

ちなみに、斉藤さんは黒いタートルネックのセーター姿だった。あえてそのような出で立ちで登壇されたのではないかとおもわれた。その姿は『雪の断章』の主人公にとっても鍵となるものであるからだ。たんなる偶然だったのかもしれないのだけど。

この企画は2月1日まで。あと数回足を運ぶつもり。ぼくにとってのベスト『東京上空いらっしゃいませ』もまたスクリーンで観なければ。

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