スイカ化した身体

スイカを紛失した。JR東日本が発行しているSuicaカードのほうである。

クレジットカード機能付きだったので、サポートデスクに電話すると、すぐに無効にしてくれた。代わりのカードが届くまで一週間ほどかかるという。その間、スイカなしでバスや電車に乗らなければならない。

面倒だろうなあ、とおもった。やってみると、やはり面倒だった。これまでなら駅につくなり改札へ行けばよかったのだが、まず券売機に向かわねばならい。財布からお金をだして切符を買う。これが面倒なのだ。

さらに、自動改札機は大半がカード専用になっていて、切符を受けつけてくれるのは、1/4くらいしかない。

目的地まで切符をなくさぬよう注意していなくてはならない。

なにより面倒に感じられたのは、交通費として必要な現金をつねに所持しているように気をつけなければならないことだ。

いちいち券売機で切符を購入するから、否応なく運賃を気にすることになる。愕然としたのは、品川までいくらかかるのか、それさえ知らなかったと気づいたことだった。

スイカを導入する隠れた目的のひとつは、支払金額を意識させないことになるのだとおもっていた。実際そのとおりであることを、じぶん自身で身をもって証明したようなものだった。

わが身体はすっかりスイカ化していた。利便性はつねに思考停止と裏腹である。わかっちゃいるけどやめらない。そういうものなのだろうか。

ところで、紛失した元のスイカカードは、数日後に《くんくん》が発見した。遊んでいるとき、庭で拾ったのだそうだ。

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