『ジャージー・ボーイズ』を観てきた

ジャージー・ボーイズ』を観てきた。舞台の来日ミュージカルである。場所は渋谷ヒカリエにある東急シアターオーブ

行ってみて驚いたのは、ほぼ満員だったことだ。キャパ2000名弱だから、それだけの集客があったということだろう。まあよかったと安心した。べつにぼくが安心しなければならないような義理もないのだが。

舞台のほうは、出だしは声がおもったように出ておらず、少しぎこちない感じだったが、しばらくすると調子が出てきたようだった。場面転換が烈しく、話を追うのに忙しい。ストーリー自体は単純なので、話が見えなくなることはない。

役者については、カンパニー制のツアーメンバーなので仕方ないことではあるのだけれど、あんまり高望みしすぎてはいけないというのが率直な印象ではある。

とはいえ、ある水準はきっちり担保されているし、すべてがすでによく練りあげられているので、誰が観ても十分愉しめる。たとえフォーシーズンズや60年代ロックの歴史について何も知らなかったとしても、だ。楽曲のすばらしさはあらかじめ折り紙つきだからこそのジュークボックス・ミュージカルである。もちろん、音楽についての知識は、ないよりはあったほうが、はるかに愉しいのはいうまでもない。

なお、ジュークボックス・ミュージカルというと軽く見る向きもあるようだが、ぼくはそうはおもわない。ミュージカルは昔からヒット曲を取り込んできたわけだし。むしろ、むやみにシリアスなテーマを扱ったり、意味ありげな音楽をつけたりされるほうが、個人的には苦手である。和田誠さんではないけれど、ミュージカルはまずは愉しいことが基本、というのが、ぼくの立場だ。

さて、エンディング近くは、客席も一緒にうたう場面である。残念ながら英語なので、日本人観客ではそこまではむずかしい。それでも、スタンディングで手拍子したりしているひともけっこう出たほどで、観客たちは大喜びだった。

『ジャージー・ボーイズ』はこれが初来日であったとおもう。ブロードウェイの初演は2005年だから、これまで10年間も来日しなかったのが不思議なくらいだ。集客に不安があったからだろう。フォーシーズンズの浸透ぐあいが、やはり日米ではちがうということだ。今回の来日公演が成功だったとしたら、それはイーストウッド監督の映画版が日本でそれなりにヒットしたことと無関係ではあるまい。前にもちょっと書いたが、あれはあれで手堅くまとめられた佳作だったと、今回あらためておもった。

客席には、けっこう若いひとたちの姿も目についた。かれら彼女たちが、古いポピュラー音楽をかれらなりに発見しているということであれば、なかなかすばらしいことである。

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