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映画『日本のいちばん長い日』

公開中の映画『』(原田眞人監督)を観た。どうしたって、岡本喜八監督の同名作(1967年)と引き比べてしまう。

ディテールなどに力を入れていることはよくわかるし、昭和天皇をあえて正面から描こうとしているというチャレンジもわかる。中嶋しゅう演じる東条英機が、なかなかにねちっこい感じをよく出していたのも印象に残った。

だが、全体としては、焦点がぼやけて曖昧な作品という感想をもった。なんだか、いろんなことにたいして、妙に一義的な理由が与えられ、平板に説明されてしまっている。そこからは、「本土決戦」とか「徹底抗戦」といったようなタイプの思考を支配する「空気」が孕む、ある種の「狂気」が消し飛んでしまっている。

そのため、たとえば、クーデターを蹶起する松阪桃李の畑中少佐らがなにに突き動かされているのか、その焦燥感や絶望感や自己陶酔の感覚がよくわからない。途中からは、ただ無表情に乱暴狼藉をはたらく殺人兵器みたいに見えてしまう。

というと、いやそれは「狂気」といって片づけてしまうのではなく、当時のかれらなりの論理があったのであり、それを描こうとしているのだ、ということなのかもしれない。もちろん当時のかれらなりの論理があったことは確かであろう。

だが、ここでいう「狂気」とは、個々人のレベルというよりも、そのときの社会が社会として孕む狂気のことだ。そしてそれは、あの当時に特有のものであって今日ではありえない、という類のものではない。ぼくたちの現在の日常にもつねに潜在しており、どこかで地続きになっているはずのものである。

たぶんそうした「狂気」への感覚が、岡本喜八作品にあって原田作品にはないものの、決定的なひとつであろう。

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