「負けっぷりよく負ける」こと

前回の記事で映画『日本のいちばん長い日』について触れたが、そこで山崎努が熱演している終戦内閣の首相鈴木貫太郎は、1967年の岡本喜八監督の同名作では笠智衆が演じていた。

鈴木貫太郎がどういうひとか、その来歴の概略は、調べればすぐにわかる。

映画には(記憶しているかぎりでは)出てこないが、当時鈴木は、終戦に向けたむずかしい舵取りのなかで、「負けっぷりよく負けることが大切だ」という意味のことを語ったという。あの状況や、旧軍の歴史と独特の思考回路を考えるならば、なかなか含蓄のある言葉だとおもう。

「負け」を率直に認め、受け入れることができて初めて、みずからを省みることが可能になる。それこそが勇気を不可欠とすることだろう。だからこそ、それは「負け」をたんなる「負け」として終わらせず、そのつぎの段階へと歩を進め、新たな出発点にたつことを可能にする唯一の手立てでもある。

そんな言を鈴木が口にすることができた背景には、もしかすると、鈴木が1868年(慶應3年)に生まれたのが関宿藩家臣の家であり、明治から大正・昭和と、いわゆる「賊軍」の名の下に生きざるをえなかったことが関係しているかもしれない。

千葉県北西端の関宿町(いまは野田市に含まれている)に、鈴木貫太郎記念館がある。ぼくは一度だけ訪問したことがある。数年前の冬のことだ。

古くはあったが、小さな落ち着いた館だった。飾ってあった軍礼服が予想外に小ぶりだったことに、少しくおどろいた。

近くの實相寺にお墓があるというので、おまいりした。

上はそのときの写真である。

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