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満蒙開拓平和記念館

満蒙開拓平和記念館へ行ってきた。場所は長野県の最南西部、岐阜県と県境を接し、愛知県にもちかい阿智村だ。

R153から看板にしたがって、街に入る。穏やかながらなんともちいさな街だから、あっというまに市街地をとおりすぎた。あとはよくわからないまま走ってゆくと運動公園に出る。その先に、館はあった。

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建物は木造の平屋。屋根から薪ストーブの煙突がたちあがっていた。

立派な建物に見えたが、しかし公設ではなく民間団体の運営なのだそうだ。入館料500円。満蒙開拓団をめぐる歴史と、そこにかかわったさまざまな人生を、ここで学ぶことができる。

なお館内は撮影禁止のため、写真はありません。

さて、満蒙開拓団とは、戦前から戦中にかけて、日本が国策として旧満洲へ送りだした農民たちのことだ。長野県が送りこんだ人数は全国最多であるという。

内地にいても凶作つづきで喰えないので外地へいけということで、組織的に送りだした。村の中心人物や学校の先生なんかも、その担い手だった。なかには「分村」と称して、村のかなりの割合が満洲へわたったところもあったという。

行けば満洲で土地がもらえるということだったが、その土地は、もともとは現地の住民のものだった(当然だ)。それを関東軍がむりやり安値でとりあげたのだったという。現地へわたった開拓民たちは、その事実を知らないか、知ったとしても見て見ぬふりをするほかなかった。

そんな事情なので、現地のひとびとは当然、日本人を敵視する。抗日運動はいっそう烈しくなる。開拓民の募集にあたっては「責任をもって警護する」と言いきっていたはずの関東軍は、戦争の最末期、ソ連軍の侵攻を前にして密かに満洲の2/3を放棄することに決め、こっそり撤退した。ソ連兵の出現にあわてて逃げてきた開拓民たちは、関東軍の基地がからっぽなのを見て、初めてその事実を知ったという。

置き去りにされた開拓民たちは、現地人やソ連軍の猛攻撃をうけるなかで悲惨な敗走をつづけることになった。集団自決したひとびともあった。若い娘はソ連軍に拉致され、追いかけていった父たちはソ連兵に射殺された。生き延びたひとびとも、ソ連軍につかまって強制収容所へ送られた。そこで亡くなったひとたちも膨大な数にのぼるという。現地で遺棄されたり、預けられたりして(具体的な状況が想像できないのだが)、いわゆる残留孤児となったりした。

敗戦後の日本政府は、在外邦人たちが日本へ帰らず在留する選択肢も認めた。というよりは、それならそれで可とし、日本国籍を離れてもよいという方針をとった。いいかえるなら、国民を保護するどころか、切り捨てやむなしと判断したということである。

命からがら日本へ帰ることができたひとびとを、さらに新しい困難が待っていた。帰ってきたものの土地はすでに渡満時に売り払っていたために無一文で、いくところがなかった。「満蒙乞食」という言葉さえあったという。

そういう事実について、しかも日本政府はこれまで必ずしも正面から実態を明らかにしようとしたり、解決しようと努力したりしてこなかった。民間人の粘り強い努力があって、それでようやくここまで来たという。

この施設は、そうした事実を伝えるためにつくられたということらしい。展示だけではなく、関係者にインタビューして映像として記録したり、映画製作にかかわったり、講演会やパネルディスカッションをひらいたりもしているのだそうだ。さらに深め発展させていこうという姿勢のあらわれである。

現代の国家とは巨大な機構である。それがいったん戦争をはじめてしまったとき、ごくふつうのひとびとがどんな目にあうのか。満蒙開拓団の史実は、そのことを端的に示している。

そしてまた、もうひとつ忘れてはならないのは、敗戦時の悲惨で極限的な状況のなかで行き場を失って逃げ惑う日本の開拓民たちにたいし、陰に陽に救いの手をさしのべた中国のひとびとも少なくなかったということだ。ナントカ人というような類いの区分によってひとを敵味方や優劣に弁別するよりも前に、誰もがみな、生活というものを営む身体をもったひとりの人間なのだということを、その史実は教えてくれているのではないか。

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阿智村は、お世辞にも交通の便がいいとはいえない場所だが、それでもあえて足を運ぶだけの価値は十二分にあるとおもう。

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