お弁当と入試の雪の朝

センター入試も終わり、受験シーズンもそろそろ本格的に開幕である。

この時期、入学試験というとなぜか雪の印象がつきまとっている。写真は、ぜんぜん関係ないけど先日撮った新千歳空港前の朝日。

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ぼくが大学入試をうけたのはもうだいぶ前のことだから、もう記憶もあんまりはっきりしないのだけど、ひとつよく覚えていることがある。浪人時代の当時でいう共通一次試験(現在のセンター試験の前身)のときのことだ。

その日の名古屋も朝から雪だった。試験会場につき、指定された席に座り、試験開始を待っていた。そのとき気がついた。ありゃ、お弁当をもってくるのを忘れちゃった、と。

お弁当はむろん母が用意してくれていた。それをテーブルの上に置き忘れてきたのだ。

しかし、いまさらどうにもならない。それに、受験票や筆記具とちがい、お弁当なら忘れても試験そのものには直接関係がない。お昼休みに買いにゆくというわけにもいくまいから、まぁおなかはすくけど、がまんすればいいか。

そんなことをぼんやり考えながら、最初の試験開始時刻がやってくるのを待っていた。窓の外では雪がますまずひどくなり、ぼたぼたと降っているように見えた。

そのとき教室の扉がひらいた。そこにぼくの父が立っていた。忘れたお弁当を届けに来てくれたのだ。いまなら保護者を試験室まで入室させるようなことはありえないだろうが、当時だって夢想もしないことだった。が、とにかくそこに父がいたのだ。

教壇にたっていた監督の先生によばれて、ぼくは前へ出ていった。そして父がさしだしたお弁当の包みをうけとった。

そのときぼくが何を言ったかは覚えていない。父もたぶん「ほら」くらいのことしか言わなかったとおもう。そうして、ぼくはお弁当の包みをかかえてじぶんの座席に戻った。

それ以外のことはほとんど忘れているのに、このことだけはわりにはっきり覚えている。でも、あまりにありえないような話なので、事実だったかどうか、あらためて問われると自信がなくなってしまう。もしかすると、あとから無意識的に捏造された記憶なのかもしれないとさえおもわないでもない。でもやっぱり、あれは実際におきた出来事だったのだ。

そしてそのままぼくは共通一次を受け、まあまあなんとかなる程度の結果が得られ、二次試験を経てぶじに受験生生活を終えることができた。それが父のおかげかどうかはわからないのだが。

今年の受験生のみなさんの幸運を祈ります。