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映画『FAKE』のラストショットについて 2/3

映画『FAKE』のラストショットについての話の続き。前回はこちら

なお話の都合上ラストの部分に触れていますので、この先を読むかどうかは各自ご判断ください。

本文は「つづきを読む」をクリックすることで表示されるようタグを打ってありますが、スマートフォンなど小画面だと効かず、最初から全文が表示されてしまうケースもあるようです。

     *

映画としては、このラストショットはパーフェクトだ。これ以外の締め方は、ちょっとないだろう。監督の完勝である。

このラストショットには、先述のとおり、沈黙する佐村河内氏の横顔が収められているわけだが、もし仮に、かれが何かしゃべったのだったとしてもまったくかまわない。しゃべりかけて言いよどんでもいい。佐村河内氏のリアクションを収められれば、その内容はもうまったく重要ではない。ここまで来てしまったら、あとはもうどう転んでも映画になるから。

それもこれも、あのタイミングでぶつけられたワンフレーズ的質問に依拠している。ワンフレーズ的質問とは、乱暴で粗雑なものだが、わかりやすくて、ある種便利なものだ。前後の文脈から切り離し、物事を極端に単純化して、白か黒かの二分法に縮退させる話法であるからだ。テレビの討論番組の司会者などが得意としていたもので、政治からビジネスまでいろんな場面の言説でよく見られるようになって久しい。

この種のワンフレーズ的質問にたいして、反射的にキャッチーなリアクションができれば、芸人になれるかもしれない。でもふつうは答えに窮するだろう。誠実に答えようとすればするほど、むずかしい。質問自体がなにしろ乱暴で粗雑なのだから、まともには答えようがない。

ところがワンフレーズ的質問では、じつは相手が答える内容にほとんど重要性はない。そこで求められるのはリアクションである。相手からリアクションを引き出し、それをネタにしていじるための道具として、ワンフレーズ的質問はうってつけなのだ。

     *

監督はもちろんそんなことは百も承知だろう。

実際作中でも、「騒動」をおもしろおかしくネタにするバラエティ番組(一度は佐村河内氏に出演依頼に来たものの断られ、けっきょく新垣隆氏が出演している)を、監督がわざわざ佐村河内氏に観せるシークエンスがある(ほんとうに人が悪い)。そのうえで監督は佐村河内氏に向かって解説する。メディアの作り手は、特定の見解なり主張なりをあらかじめもっているわけでなく、ただ目の前のものをつかっていかにおもしろくするかということしか考えていない。だから結果としてこういう番組になるのだと。たしかにそのとおりだ。

だからラストショットでのワンフレーズ的質問は、マスコミの、そしてその視聴者たるわたしたちの戯画でもあり、これまで監督がくりかえし発言してきた(マスコミという意味での)メディア批判と地続きでもあるのだろう。そして佐村河内氏にかかわる諸現象がマスコミだけでなく諸種のメディアの介在抜きには成り立ちえなかったことを考えれば、監督はいよいよ「作曲」がなされたこのタイミングを見計らって、意図的にその質問をぶつけているのだろうとおもう。

くりかえしていうが、映画としてはそれでパーフェクトであっただろう。

第3回につづく。

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