クリスマスクッキーを焼く

友人のアメリカ人は、日本へいったときに初めてクリスマスケーキを知ってびっくりしたそうである。日本でおなじみのクリスマスケーキというものはアメリカには存在しない。あれは不二家の発明になるものである。

アメリカでクリスマスのお菓子といえばクッキーが一般的だという。そもそもサンタクロースの好物がクッキーということになっており、それでクリスマスイブの晩にはサンタのためにクッキーを用意しておくのだそうだ。

市販のクッキーなど型をつかってサンタの形をきれいに再現したものもあるようだが、家でふつうに手づくりして焼くことも少なくない。それで、友人がつくるのを手伝わせてもらうことにした。

つくったのは、サムプリント thumbprint と、ペパーミントチョコレートの二種類である。レシピはネットにたくさん転がっている。アメリカの料理はレシピどおりにきっちり計量し(それ用のスプーンとカップもある)、きっちり手順を守ってつくれば、きっちり同じものができる。

粉とバターをボウルにいれ、スタンドミキサーという卓上型のミキサーで攪拌する。この装置はミシガン製だそうで、かなり巨大である。ブレードが回転するだけでなく、ブレードの軸自体も円運動する。

攪拌がすんだら、スクープ(アイスクリームをすくうときにつかう道具)ですくう。これも、レシピに1インチ大と指定があるので、そのサイズのスクープをつかう。すくった生地を手で球状にまるめる。それを白身につけ、砕いたナッツをまぶして、オーブンシートの上にならべておく。ならべおわったら、親指で真ん中にくぼみをつけ、オーブンで焼く。焼きあがったら専用の網の上にならべて冷ます。

つづいて、ペパーミントチョコレートクッキーのほうにとりかかる。こちらも粉とバターを攪拌する。チョコレートは砂糖なしのクッキー専用のものがあるそうで、それを耐熱容器に入れてレンジで溶かす。そして攪拌しながらチョコレートをたらして混ぜる。さらにチョコレートディップも投入。これをまた1インチ大に丸めてオーブンシートの上に間隔をあけてならべてゆく。コップの底をつかって平らにつぶし、オーブンに入れて焼く。焼き上がったら、別途つくっておいたペパーミントクリームをへらで塗るように盛りつけてゆく。

仕上げとして、溶かしたチョコレートをスプーンで振ってクッキーの上に細長い線がたくさんできるように振りかけてゆく。スプーンを上手に振らないとボタッとまとまって落ちてしまう。ぼくが振ったところは、ぼたぼたとチョコレートが玉になって落ちてしまい、かなり汚いできばえになってしまった。ま、しかし、味に影響はあるまい。

チョコとペパーミントと味の取りあわせとしてだいぶ距離があるように個人的にはおもうのだが、それが同時に口のなかに入ってくる。これまであんまりたべたことのない味だった。

サムプリントのほうは、ラズベリージャムをくぼみに載せてたべる。おいしい。大量のバターと砂糖が入っているので、なんというかからだじゅうに糖分がゆきわたるような感覚になる。

友人は、どちらかといえばサムプリントのほうが好きだという。なぜなら子どものときからクリスマスというとおかあさんがこれを焼いてくれたから。そんなふうに子ども時代の記憶と結びついて、それぞれのひとに、それぞれのクリスマスクッキーがある、ということらしい。

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