リアル急行北極号PM1225を見にゆく

ロバート・ゼメキス監督の映画『ポーラー・エクスプレス』(2004年)は、こちらではクリスマス映画の定番となっているみたいなのだが、その原作は絵本『急行北極号』である。日本語訳は村上春樹さんで、ぼくは授業で何度もつかわせていただいた。

じつはこの急行北極号は実在する。モデルになった蒸気機関車が動態保存されており、現役で走るのだという。場所はミシガン州のオワッソー Owosso というちいさな街だ。

というのも、原作者のオールズバーグはミシガン州グランドラピッズの生まれで、子どものときに当時ミシガン州立大学のミュージアムに保存されていたこの蒸機をよく見かけていたのだという。

その蒸機がこれ。Pere Marquette 1225。

この蒸機を見にいってきた話を書いてみたい。

レッドフォードシアターで『ポーラー・エクスプレス』を観る

本題に入る前に、まず映画『ポーラー・エクスプレス』を見にいってきた話を簡単にしておきたい。ぼくはこの映画の出来がそれほどいいとはおもわないが、アメリカのひとびとにとっては定番だということに敬意を払い、見にいってきた。

場所はデトロイト北部にあるレッドフォードシアターである。

周辺は再開発の波がおよんでいない地域で、夜はちょっと注意が必要かもしれない。ぼくがここに来るのは二度目。今回はマチネーで観たのだが、最初に来たときは夜の上映だった。もちろん映画館自体はまったく問題ない。地図はこちら。

戦前からある映画館で、一時廃棄されそうになったものの、現在は非営利団体が運営している。スタッフも多くは地元住民のボランティアのようである。アナーバーのミシガンシアターに似た状況だ。ただこちらは基本的に週末しか開けないみたいである。

内装が独特で、ごらんの日本趣味である。歌舞伎小屋みたいなつくりになっている。とくべつ日本とかかわりがあったというわけではないようなのだが。第二次世界大戦中はこの内装は撤去されたが、戦後また復元されたという。

上映前にオルガン演奏がある。いきなり『星条旗よ永遠なれ』から始まるが、そのあとはクリスマスソング・メドレーだった。

スクリーンの手前に、鉄道模型のジオラマが飾ってあった。クリスマス仕様なのか『ポーラー・エクスプレス』にひっかけたのかはわからない。子どもも大人も集まってながめていた。

『ポーラー・エクスプレス』はそう長い作品ではないが、前回同様インターミッションが入った。その間にグッズを売ったり寄付を募ったりするのである。

リアル急行北極号を見にゆく

さて別日、オワッソーまでPM 1225を見にいってきた。ここにあるSteam Railroading Instituteというミュージアムが、この蒸機を動態保存している。秋から冬にかけて土日に運転しているらしい。チケットは$60くらいからでオンラインで買えるが、ぼくがアクセスしたときには売り切れだった。

実物を見ると、おもっていたよりもずっと大きかった。全長30.99m, 総重量365.6tというから、日本でいえばC62(同じく21.475m, 145.17t)の倍くらいか。2-8-4という車輪配置で、車軸の配置でいえば、1軸先輪、4軸動輪、2軸従輪という形式だ。日本の旧国鉄式にいうと、D51, D52のようにDであらわされるタイプである。

iPhoneでビデオを撮っているところへ突然汽笛が鳴った。鼻先についた鐘も鳴らす。ぐりんぐりん前後に動く。蒸気はずいぶん灰色で、よくあがっていた。

ほどなくして発車。ザクザクという蒸機特有の音を響かせながら西へ向かって去ってゆく。動画をあげてみたので、よかったらごらんください。

Pere Marguette 1225 the real Polar Express

PM 1225の直後にはカブースが、そのうしろには客車が何両も牽かれていた。形はまちまちで、あちこちからかき集めてきたものとおもわれる。乗客は満員だった。最後尾にディーゼル機関車がくっついていた。後ろから押すのか、帰りを牽引してくるのか。

この観光列車がどのくらいで帰ってくるのかはわからない。ルートも知らない。しばらくは遠くで汽笛が聞こえていたが、やがてそれも聞こえなくなった。ミュージアムからはクリスマスソングが流れてくる。しかし日曜はお休みで中は見られないみたいだった。

ミュージアム前の看板を見ると、PM1225のことばかり書いてあった。1941年に完成し、おもにミシガン州からシカゴへかけての一帯を走り、1951年に退役したというから、実働は10年ほどでしかなかった。現在では同型は2両しか残っておらず、ここにあるのは唯一稼働する個体だという。

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