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子どもの時間 Archive

島牧でつららを見る

北海道の島牧に行ってきた。島牧で年越しするのは十数年ぶりだ。

往路は吹雪いたものの、大晦日の午後には風は収まり、気温もあがってきた。

俊輔くんに案内してもらい、北国潤につららを見に行った。

そこには廃道になった古い素掘りのトンネルがある。入口のところへ来ると、上から大きなつららが垂れ下がっていた。一週間でこのくらいに成長するのだという。思った以上に頑丈で、子どもたちがつぎつぎに雪玉を投げつけても、びくともしなかった。

トンネルを抜けて江ノ島側に出る。崖地一面に無数のつららが林立していた。

少し暖かだったせいか、つららの何本かが途中で崩落しており、古代ギリシア遺跡の廃墟みたいな光景だった。折れたつららは一抱え以上もある太さで、青白く光っていた。

その上を乗り越えて、子どもたちは崖の直下まで登っていった。鎗くらいのサイズのつららを見つけて折り、振りまわして遊んでいた。


皆既月食

皆既月食を見たいと子どもたちが言いだし、いつもより遅くまで起きていることになった。

食が始まるまで、DVDで『田吾作ロイド一番鎗』(1927)を観て待った。

ときどきデッキに出て空を見上げる。寒いが、おかげでよく晴れて、月も星もきれいに見えた。

月は天上やや東寄りのところにあった。食は月の左下から始まり、みるみる欠けてゆく。皆既月食となるころには、月は、斑点をともなった赤黒い球体となった。醤油漬けのいくらみたいだった。

NEX-5Nで写真を撮った。望遠レンズも三脚もないので、まともな写真にはならなかったが、まあ、それでもいい。

月食がすすむと、まわりの星がいっそうよくわかるようになった。月の右下にオリオン座があり、三つ星だけでなく小三つ星も見えた。近くにシリウスがあった。月の右上には、おうし座のすばる(プレアデス)も見えた。カシオペア座は北の空の下のほうにあった。

子どもたちも空を見上げながら、おしゃべりしていた。《くんくん》がいった。

「みなさん、皆既月食の時間です。大事な、大事な皆既月食だから、ほんとに大事な皆既月食だから、みんなで空を見上げましょう」

言い終えると、ウケケと笑った。《みの》も《なな》も笑った。

元ネタは、かれらが大好きな映画のひとつ『南極料理人』である。

あんまり寒いので、その連想だったのだろうか。なんにせよ、夜中にちょっと近所迷惑ではあった。


桜の入学式

中学校の入学式は満開の桜の下でおこなわれた。

《なな》は、一昨年卒業した《みの》のお下がりの制服を着て、うれしそうに出かけていった。野球部の友だちと待ち合わせて学校へ行くという。

ぼくたちも遅れて行く。保護者の参加も多く、体育館はいっぱいである。なかなか盛大な入学式であった。

来賓紹介のなかで「プリティ長嶋さま」とアナウンスされると、会場にどよめきが走った。保護者も生徒も、ざわざわしている。選挙の翌日だからねえ。

中学校の三年間が充実したものでありますことを。


崇神天皇陵と景行天皇陵──山の辺の道(4/4)

トレイルセンターのすぐ先に、崇神天皇陵がある。多くのナントカ天皇陵と同様、ほんとうに崇神天皇の墓かどうかはわからないらしい。なにしろ宮内庁が封印しており、調査ですら立ち入りを拒んでいるのだそうだ。

巨大な堤を登ってゆくと、そこに壕があり、鉄製のフェンスがそびえている。壕の向こうに巨大な前方後円墳がある。奈良盆地を見下ろしながら壕沿いの道を歩いて上ってゆく。登りきったところに溜池がある、とおもったら、これも古墳だった。櫛山古墳というものらしい。そこには道が通じていたため、子どもたちは走って藪に入っていってしまった。崇神天皇陵は山の中腹にある。眼下に柳本の町を見下ろすことができる。

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夜都伎神社からトレイルセンターへ──山の辺の道(3/4)

山の辺の道はどこもよく整備されている。割栗石を敷き詰めた石畳にの急坂を下ると、集落にでた。木造の大きな建物がある。天理観光農園とある。薪ストーブを焚いているようだ。

  ▲正面にみえるのが東乗鞍古墳らしい

ここからアスファルトで舗装された道路を少し下り、しばらく行くと左折して、畑のなかの道を歩く。正面にこんもりした丘がある。東乗鞍古墳だという。自転車のおじさんがうしろからやってきた。子どもはこんなところに来て退屈だろう、でも日本の文化だからな、この道桜井まで行けるんでしょう? うしろから高齢者の団体が旗を先頭にやってきているから、急いだほうがいいなどと、ほぼ一方的にしゃべって行ってしまった。

その先に、また直売所。ここでは綿の種を売っていた。明治期まではこのあたり一帯は綿の産地だったらしい。和綿と洋綿があるという。《みの》に訊くと、そりゃ和でしょ、というので和綿の種を買う。100円。

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天理駅から永久寺へ──山の辺の道(2/4)

天理駅前の広大な広場から、アーケードの商店街を歩く。アーケードは延々と続いている。黒地に「天理教」とか「ナントカ大教会」と白文字で記されたはっぴを着たひとたちが往来する。商店には、天理教の道具や、本、服、指定の御神酒などがならべられている。《みの》がそれらを興味深そうにながめ、「天理教ってどういう宗教?」と訊ねるので困る。山の辺の道の歩き始めが天理教というのは、それにしても、どんなものであろうという気がしないでもない。

「3月28日、春の学生おぢばがえり」と大書された幕がかかっている。ぢばとは「地場」であろう。おぢばがえりとは、天理教の信者たちが聖地であるこの町を訪れることらしい。そのための宿泊施設が、町のあちこちにみられる入母屋式のやや威圧的な鉄筋コンクリート造のビルなのだそうだ。

天理教本部にでる。やたらにでかい木造のお社である。神社の細部をむやみに強調したような建物だ。マイクで若い女のひとが何やら会合の仕切をしているらしい声が聞こえてくる。広大な広場に入るとき、信者の方なのだろう、神社方式で一礼する。

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山の辺の道(1/4)

天理駅からJR桜井線に併行して、山裾をたどる古道を「山の辺の道」と称している。JR桜井駅まで歩けば約16km、ぼくたちが歩いたのは、そのひとつ手前の三輪駅まで。13kmくらいはあったようだ。たいした予備知識をもちあわせていなかったのだが、じつに気持ちのよいトレイルだった。

行き交うひとも少なく、車もあまり通らない、山の中腹を縫うようにして走る小径だから、子どもたちが大きな声をだしてもまわりを気にせずにすむし、藪から棒を探しだしてふりまわしてもかまわない。そこそこアップダウンはあるが険しくはなく、あちこちにお椀を伏せたような森が残っていて、そこがたいていは古墳なのだった。辻辻に、近くの農家の手作り販売所があって、ミカンや切り干し大根(短冊状ではなく、そいだような形状)、梅干しなどがおかれている。そして道程のほとんどで、右手に奈良盆地を眺望することができる。

一時間に2本しかない2輛編成のワンマンカーでJR天理駅へ。JR西日本が製作している散策マップをもらう。山の辺の道の分岐箇所などていねいに図示してあり、ずいぶん役だった。


大きな地図で見る

 ▼ 山の辺の道(2/4)


阿修羅

興福寺の境内に鹿がいた。見たかぎり、ざっと20頭。のそのそ歩いている。

実物の鹿を初めてみた《くんくん》は、たちまち気分が高揚した。近くにいた一頭の子鹿めがけ、にこにこ顔で「しかさーん」と駆けていった。

いっぽう子鹿のほうは、高速で接近する《くんくん》を発見するや、頭を少し低くして、《くんくん》のほうへ向かって突進してきた。鹿の頭が《くんくん》の胸に正面からぶつかった。頭突きされたのだ。

《くんくん》の顔は真っ白になった。目はまんまる。あわててこちらへひきかえしてきた。動物の世界は、けっして「かわいい」ものではない。

国宝館に入ると、なかはずいぶん混んでいた。興福寺の国宝が展示されているのだが、ミュージアムというより宝物殿といったほうが適切だ。年代順ではなく、お宝を開陳する、という趣旨である。

なかでも阿修羅像は、国宝館の展示のハイライトであろう。この像は、昨今の仏像ブームの中心にあるともいえる。なにしろ「阿修羅ファンクラブ」(会長みうらじゅん)まである勢いだ。

阿修羅像は、ちょうど千手観音と向きあうような位置にたっている。三面六臂。三面は、ひとつの精神を織りなす三つの相貌とすると、ピカソの人物画そのものである。正面の顔は眉を寄せ、不安をふりはらうようにして、一心に正面にある何かを見つめ、祈っていた。

このたたかいの神は、もう1300年も、こうして祈りつづけてきたのだ。


とにかく信じてるぞ、福島原発

文部科学省が都道府県別の環境放射能水準調査結果を公表しはじめた。@hayanoで知る。とりあえず、じぶんの住むところの放射線がおよそどんな状況にあるかを知りたい方は、ごらんくださるよう。

これにならって、政府はどしどしデータを公表してほしい。

      *

さて、昨日は午後遅めから計画停電になっていた。復旧するとわかっているわけだから、同じ停電といっても被災地のそれとは比べものになるまい。このくらいの協力は別になんら問題ない。

停電開始は1520からという話だったが、1530すぎ、気づいたら停電していた。みな逼塞しているのか、あたりはしんと静まりかえっていた。子どもの声もしない。

西空が春の夕焼けに染めあげられてゆくのを眺めていた。自宅待機中の《あ》はこんなときでも平然と仕事をしていた。えらいものである。ぼくは昨日の投稿を書いていて気になったので、『アポロ13』のDVDをMacBookで確認。エド・ハリスの台詞は、やっぱり Stay cool でいいみたいだ(ああ、よかった)。英語字幕によれば、当該箇所の台詞はこうである。”Let’s stay cool, people.”

暗くなって本も読めなくなると、《みの》の指導で、腹筋を始めた。10回やると、きつい。まいった、といっているうちに、近所の家々に明かりが点りはじめた。

本日17日に予定されていた大学の卒業式は、けっきょく中止となった。連絡がなかなか来なかったのは、最後まで可能性を探っていたためであったようだ。午後の学位記授与式は学科ごとにおこなわれる。こちらは実施するという。もちろん参加するつもり。かれらのぶじの顔を見届けて、しっかり送りだしてあげたい。

とにかく信じてるぞ、福島原発。

 *題名変更(110317)


笑っていいとも、泣いていいとも

小学校の卒業の迫った《なな》たちのクラスで「感謝の会」という催しがあった。「笑っていいとも!! 泣いてもいいとも!!」というキャッチコピーが付いている。ようするに、子どもたちによる演芸会である。保護者あての立派な「招待状」まで届いた。ちょっとのぞきに行くことにした。

会場は小劇場という部屋だ。階段状の桟敷席に座ると、正面に小さな舞台がある。ちゃんと緞帳までそなわっている。

演し物は、歌や手品、「一発芸」と称するテレビの芸人の物まねなど。入れ替わり立ち替わり子どもたちが現れては芸をして引っ込んでゆく。全員が出演するらしいが、なかには3度も登場した子もいた。式次第には各組の演目が註記されていたが、ぜんぶで13組のうち8組までが「お笑い」というのが、いかにも今様である。

《なな》たちも「お笑い」のうちのひとつ。先日YouTubeで《みの》にいくつかコントを見せてもらい、それらを適当に塩梅した、三人組の宝石泥棒のコントを演っていた。おもいのほかタイミングのとり方がよい。勉強そっちのけで、ずいぶん練習したみたいである。

演し物がひととおり終わると、全員で合唱。そのあと、子どもたちがひとりずつ立ちあがって、感謝の言葉を述べた。

ぼくは参加しなかったが、感謝の会に先だって、午前中から「太巻き寿司」づくりをし、お昼には給食と一緒にそれをいただいたのだという。

太巻きは2種類あって、ひとつは椿の花を描いた海苔巻き。

  ▲椿の花を描いた巻き寿司

もうひとつは、卵焼きを軸にして四つ割にした海苔巻きを合体させて、さらに海苔巻きにしたもの。「四海巻き」というのだそうだ。

  ▲こちらが四海巻き

どちらの太巻きも千葉の郷土料理なのだという。かなりのお手間いりである。

《なな》たちのクラスは仲がよく、みんな愉しそうだ。《なな》自身、いつもそう言っている。もちろん勉強も大事にちがいないのだが、小学校時代においていちばん大切なのは、けっきょく、そういう実感をもつことではないかと、あらためて感じさせられた。


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