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執筆以外の活動など Archive

サマータイム

今月初めのゼミの夏合宿のことだった。時間概念にかんして卒論を書きたいという学生が、発表のなかでサマータイムの説明をしているのを聴いていた。

彼女はいった。サマータイムっていうのは、夏のあいだだけ時計の針を早めることです。たとえば正午のあと午後1時を飛ばして午後2時になる、というふうに。……えっ、そうなのだっけ!?

いうまでもなく、サマータイムとは夏のあいだだけ時刻をくりあげることだ。でも当然のことながら、そのために特定の時刻を省略してしまうという方法が採られるわけはない。単純に一時間なりを早め、たとえば実時刻午後6時を午後5時ということにして、始業や終業の時刻を前にずらすという制度のことですよね。

日本でもじっさいに戦後の数年間だけ実施されたことがあるらしいが、なにしろ西欧とちがって緯度がそれほど高くないので、サマータイムらしい日の長さを実感できるのは札幌以北くらいのものだろう。近年でも思い出したようにサマータイム導入論が唱えられることがある。省エネなど経済効果を期待してのことだろう。日本のばあい、なんでもかんでも「経済効果」なのだ。

それにしても、サマータイムになると午後1時がなくなるという学生の理解は、たしかに勘違いではあるのだけれど、そういう世界を空想してみるのは愉しい。明日からサマータイムだから、当分のあいだ午後1時はこの世から消えてしまう。アナログ時計も、正午を過ぎたあと、短針は(どうやってかは想像できないけど)けっして「1」を指すことなく、「2」へスキップしてしまうのだ。

夏のゼミ生たち

前期が始まったころ、今年度の卒論ゼミ生たちの状況が全体にかなり厳しいということを「散歩の思考」にも書いた。まじめではあるが、言われたことをこなすことしかせず、こちらの顔色をいつもうかがって、それで十分がんばっていると思いこむ。そんな姿勢だった。ゼミ長の交代を余儀なくされるなど、一時は相当に覚悟を決めねばどうにもならないとおもっていた。

ところが、その後かれらは劇的に変化した。

いまや指導教員などほぼおかまいなし。しょっちゅう卒論の話しあいやら、8月初旬に実施予定の集中講義(名前は講義だが中身はワークショップである)の準備やらを進めている。じぶんの意見もいえるし、まっとうな批判もできるようになった。批判に耳を傾けることさえできるようになった。

じぶんたちなりのアイディアも出し、それを展開してゆくこともしはじめた。昨年のゼミのやり方をそのまま踏襲するのではなく、じぶんたちに必要なことは何かをよく考えて、それを実行にうつす。夏合宿で各自の卒論テーマ決めをする予定なのだが、それに先だち「プレ合宿」と称する会合を実施したらしい。土日にわざわざ大学に集まり、ゼミ生だけで卒論テーマについてえんえん話しあっていたという。

これほど劇的に変わったその転機がいつであり、何だったのか、ぼくには思い当たらない。ぼくはぼくなりにあれこれ働きかけはした。だが決定的な処方を施したわけではない。ぼくにはそんな力はないし、それほど便利な魔法などそもそも存在しない。かれら自身が、じぶんたちの意識変革と努力によって、少しずつ、みずからの殻を破ってきた。その結果だとしか言いようがない。

ゼミ生たちのそんな姿を間近に見られるのが、大学教師という仕事の、いちばんうれしい瞬間なのかもしれない。

明日から夏合宿だ。

「じぶんの頭」で考える

今年度の卒論ゼミの最初の発表を実施した。まるまる二日がかり。ぼくのところでは、テーマに限定を設けていない。条件はただひとつ、当人にとって切実なものをテーマに据えることだけである。いまの時期は、じぶんのテーマを徹底的に模索してもらわねばならない。──はずなのだが、現実は厳しい。もしかしたら壊滅的な結果を迎えることになるかもしれない。

発表のなかで、たとえばこんな場面があった。

漫画で卒論を書くと決めて入学しました、と話す学生がいた。それはわかる。そのこと自体にはなんの問題もない。しかしもう4年生の5月末だ。卒論のテーマにするのなら、漫画をどのように主題にとして取りあげたいのか、という方向で考えなければならない。入学以来3年以上の時間があり、それなりのカリキュラムも整っているわけだから、いくらでも勉強したり考えたり取り組んだりする機会はあったはずだ。それについて訊ねるのだが、何も話してくれない。ほかの学生たちがあれこれ水を向けても、それはじぶんの興味とは違うとはねつけるばかり。

ひとりの学生が質問した。
「長男ですか?」
発表者の学生が答える。「そうです」
「弟さんですか? 妹さんですか?」
「弟です」
「弟さんと漫画の貸し借りとかしますか?」
「あ、しますね」
「ほう」。質問者の学生は、そう言うと発言を終えた。

ぼくは椅子から転げ落ちそうになった。向こうのほうに坐っていた大学院生の《やだ》は「だから、なんなんだよ!?」と叫んで額を机に打ちつけていた。

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デジタルストーリーテリング作品公開

2009年度の芸術メディア論演習で学生がつくったデジタルストーリーテリングの作品が公開されました。いつものように、明学・芸術学科のウェブサイトのなかに特設ページをつくってあげてあります。2009年度デジタルストーリーテリング作品一覧へ。

同じく2009年度の夏期集中の特別演習として実施したワークショップ「なぜ働くか」の記録も公開します。これは芸術メディア系列の学生は必修の演習で、60名近い受講者が参加しました。そのようすを学生4名が取材して、テキスト・写真・ムービーを組みあわせ、ドキュメントとしてウェブサイトにまとめました。こちらから当該ページへ飛べます。

これらを含めて、授業での活動のようすは、その一部を明学・芸術学科ウェブサイトStudent Galleryにてごらんいただけます。

明学、卒業式

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一昨日(18日)は明学の卒業式だった。

ぼくのいる芸術学科の芸術メディア系列は開設からちょうど4年がたち、初めての卒業生を送りだした。かれらのために何ができたのかはよくわからない。ただ4年間ぼくなりにみっちり付きあった実感はある。いまメディア系列にはたくさんの学生が来てくれるが、それもこれも、かれらがぼくたちを選び、一緒になってここまで創りあげてきたものが、まがりなりにも少しずつ形になってきたからだろう。

明学の卒業式は学部ごとにチャペルでひらかれる。このチャペルは1898年の建築で、ヴォーリズの設計によるものだ。ふつう一般の教員はいちいち参列しないし、ぼくもこれまでそうしたことはなかったのだが、今回は光栄なことにぼくのゼミ生が総代に選ばれたので、その姿を見てやらねばと隅のほうで臨席した。袴姿のその女子学生は、あとは長耳さえつければ映画『サマーウォーズ』で花札を切るナツキのアバターにそっくり、といった恰好で、ドスドスと壇上にあがって卒業証書をうけとった。

学長のスピーチは、意外に──といっては失礼かもしれないのだけれど、なかなかよかった。明学の創設者ヘボン博士のエピソードを紹介しつつ、目立たず控えめだが芯は強いというのが明学の校風だ、まわりに流されずじぶんの仕事をこつこつと成し遂げよう──小事をもって大事をなせ、というお話。

引きつづいて卒業証書授与式。こちらは学科ごとにひらかれる。卒業生ひとりひとりに証書が手わたされたあと、教員がひとりずつ祝辞を述べる習わしなのだが、なにせ個性派ぞろいなので、マイクをもたせると、これがみな長い。順番を待ちつつ何を話そうかあれこれ考えているうちに、なぜか右足のふくらはぎが思いきり攣ってしまった。少しおさまったかと手で触れたとたん、またびくんと痙攣しで、壇上でひとり脂汗を流していた。あとで同じメディア系列の岡本章先生が「ちょっと診てあげよう」といって、マッサージしてくださった。岡本先生は著名な演劇家であるだけでなく、ヨガでも知られた方なのだ。おかげで、夕方からの謝恩会にも参加できた。

謝恩会の会場は近くのホテルだった。授与式に姿の見えなかったゼミ生が、ドレス姿で走りまわっていた。授与式をさぼってこちらの準備をしていたらしい。一次会も二次会も、ゼミ生たちが企画・準備・運営の中心として、裏方仕事を一手に引き受けていた。そういうことが大事といってきた指導教員としては、たいへんよろこばしい。卒論を選択しなかった学生たちや、映像や美術など他系列の学生たちともひさしぶりに会って話ができた。心のこもった、けれどもまるで湿っぽくない、いい会だった。二次会は五反田(最近の飲み会はここが多い)で、終電間際までつきあって帰った。

たまたまこの日はぼくの誕生日だった。もう誕生祝いというような年齢でもないのだけれど、サプライズで、掛け時計をもらった。ゼミ生がつくっているウェブサイトのロゴ(これもゼミ生がデザインしたもの)そのままの時計である。”HASEGAWA SEMI” という文字は学生たちがひとり一文字ずつ手貼りしてくれたのだそうだ。こんな学生たちに恵まれて、ぼくは幸運だった。

卒業おめでとう。

軍艦島

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ゼミ合宿で長崎に行ってきた。目的のひとつは軍艦島見学である。着いた日は雨だったが、さいわい天候がもちなおし、翌日ぶじに船が出て上陸することができた。

着いておどろいたのが釣り人である。堤防の上に数名が陣どっている。なかには、いつ崩れてもおかしくないような古いクレーンの台座の上で竿を投げているひともいる。喩えは大げさだが、決死の思いで敵前上陸作戦を敢行したところ、すでにテレビクルーが待ち構えていてそのようすを中継していました──みたいな、おもわぬメタレベルに遭遇してしまった脱力感である。

軍艦島は長崎市が管理していて、見学用に新たに桟橋をつくり見学路も設置してある。見学者は施設利用料300円を支払うしくみだ。ところが釣り人たちは、これとは無関係に渡船でやってくるのだという。不法にあたるのかどうかはわからないが、軍艦島見学を推進するひとたちからみれば、施設利用料も支払わずその恩恵だけ享受するフリーライダーのように見えるらしい。

両者のあいだには一種の緊張関係がある。釣り人は、ぼくたち見学者の一団(50名ほどいた)がまるで視界に入らず存在すらしないかのようにふるまっており、案内のひとたちもまた同様だった。

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軍艦島自体については、いずれ別にまとめて「さんぽのしっぽ」のほうにでもあげておくつもり。

大学院入試

大学院の入試が終わった。手前味噌で恐縮だが、わが芸術学科の大学院は例年なかなか人気を集めている。今年も14名が受験した。

ぼくたち芸術メディア系列の教員(といっても三人しかいないのだけど)にとっては初めての大学院入試でもあった。学部にこの系列(コース)が新設されて4年、今春初めての卒業生を出す。それにあわせて来年度から大学院に芸術メディア論の課程が設置されることになったのだ。

今回のメディア系列の大学院受験者はいずれも学部一期生だった。同僚である演劇家の岡本章先生は、いずれは他大学出身者や現場経験のある社会人が受験してくれるようになるとおもしろいねと言われる。同感である。

おおた区民大学

2月最初の日は雨。夜にはこのあたりも雪になるという。

先日おおた区民大学というところで一コマだけ授業をしてきた。場所は蒲田、富士通の大きな工場の隣である。

メディアリテラシーのワークショップをという趣旨だったのだが、さすがに本格的なことをするほどの時間はない。ワークショップについてはごく控えめにとどめ、映像分析の意義について話をし、テレビCMを材料に簡単な分析手法を伝授することにした。

平日の夜7時から開講というスケジュールにもかかわず、参加者は30人ちかい。この種の催しのつねとして60代以上の方が多いのだが、みなさん存外に柔軟、ディスカッションしたり、手をあげて発言してくださったりと積極的で、おかげさまで終始よい雰囲気で終えられた。

参加者のみならず、スタッフの方たちの運営ぶりの賜物でもあろう。みな20代と若いのにしっかりしていて、よく勉強もされている。授業中も参加者にまじって席につき、一緒に受講されていた。その姿勢から学ばなければならないのは、むしろぼくのほうである。すっかり恐縮してしまうのだった。

口頭試問

卒論の口頭試問をぶじに終えた。卒論ゼミのプログラムはこれで完了である。

同じ学科のY先生からは、愛犬からコスプレまで脱領域的というかユニークで大変よろしいとお褒めの(そう信じている)言葉をいただいた。題材はかくのごとく多様だが、アプローチはどれもメディア論的であり、それぞれ心を尽くした卒論を書きあげられたのだから、みんなそれなりに手応えを得たようだ。

一年前に初めて卒論ゼミとして集まったときから考えると、よく成長してくれたとおもう。指導の成果ですと自画自賛したいところだが、親はなくとも子は育つというから、勝手に成長したというのが実状だろう。でもやっぱり、ほんのちょっぴりなら自画自賛しても許されるのではないかしら。

口頭試問には来年度の、つまり二期生たちも臨席して聞いていた。ぼくのところに来るくらいだからそれなりに覚悟はしているはずだが、自覚という点ではまだまだこれから。打ち上げ会場に向かう途中、4年生から、こう言われた。卒論が終わって解放感でいっぱいです。でも先生はこれをまたゼロからやるんですね、と。

卒論提出

12名いるゼミ生の全員が、本日ぶじに卒論を提出した。

ひとりの脱落者もださずにここまで漕ぎ着けることができた。かれらは芸術メディア系列の第一期生である。学生はもちろん、指導する側にとっても初めての卒論なのだ。明学に着任して以来の4年間で最大の山を越えたという感じではあるが、むろんまだこれから審査(含む口頭試問)をしなければならない。インディ・ジョーンズみたいな冒険アクション映画でいえば、敵の棲む魔殿の深奥に入り込んでお宝を手にし、いよいよ脱出! といったあたりか。

なにはともあれ明日は打ち上げ。

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