コペン・ロンドン・カーディフ Archive
モンティ・パイソンからウェールズへ
- Mar 26, 2007 22:26
- コペン・ロンドン・カーディフ | デジタルストーリーテリング | ミュージカルという問題 | メディア論的に考える | 旅する
コペンハーゲンからロンドンに到着した。整然として落ち着いたコペンとは打ってかわったヒースロー空港の雑然たるようすは、むしろぼくには身の丈にあっている。BBC でヒアリングを済ませたあと市中へ出、調査チーム全員で、やたらに混雑するチャリング・クロスの雑踏を歩いた。立派なファサードをもつパレス劇場の前にさしかかると、モンティ・パイソンがかかっていた。今回の調査目的は英国ミュージカル喜劇事情ではないから、観劇へと暴走せぬよう自制するつもりでいた。が、やっぱり観たい。ボックスオフィスで訊ねると座席はまだあるという。
だが同行者たちにとってはいい迷惑だろう。なにしろモンティ・パイソンだ。誰もがたのしめるものかと訊かれると躊躇する。ひとりだけでこっそり観ようかな……などと口ごもっていたら、一緒にいた古川さんに叱られた。そういう問題じゃないでしょ! おっしゃるとおり。じゃあ、いいんですね、と念をおして、この芝居を観ることにした。調査チームのうち小川さんと松井さんも同行することになった。
それからの 2 時間半、久しぶりにロンドンのミュージカルを堪能した。演目は “Monty Python’s SPAMALOT” 、1975 年の映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ監督)をミュージカル舞台化したものである。原作映画の題名から一目瞭然でわかるように、アーサー王と円卓の騎士団の物語だ。日本でいえば忠臣蔵とかヤマトタケルみたいな誰もがお馴染みのお話だし、オリジナルの映画も再映やテレビなどでよく観られているのだろう。観客は中高年の男女がいい塩梅で混じっており、下は中学生みたいな子も少しいたが、みんなじつによく笑っていた。残念ながらぼくには、バーバル・ギャグなどよくわからないところも多かったけど。
モンティ・パイソンと謳われてはいるものの、オリジナル・メンバーからは脚本と楽曲にエリック・アイドルが参加しているだけである。演出はマイク・ニコルズだ。とりわけ第一幕でミュージカル場面の演出にアイディアが豊富で密度が濃く、キャストの練度も高くて飽きさせない。セットは大がかりではあるが使いまわしにこれもアイディアがある。アーサー王役のサイモン・ラッセル・ビール(シェイクスピア劇の俳優)のボケ具合もなかなかよいし、湖の女神役のハンナ・ウェディンガムの芸達者ぶりも圧巻だ。全般にアメリカナイズされており、カネがかけられている分に足るスペクタクルな面白さは満喫できる。ただしその分、英国流の毒気は薄い。
この作品、現在ロンドン以外に、ブロードウェイ、全米ツアー、ラスヴェガスと都合 4 チーム併行で公演しているのだそうだ。米英双方からの出資で走っているのだろう。これぞショービズ。
ところで、アーサー王伝説といえばウェールズだ。だから翌日から調査チームが向かったのがウェールズの首都カーディフだったのも、もしかしたら偶然ではないのかもしれない。この地ではここ数年、デジタルストリーテリングという試みが展開されている。ふつうのひとびとがじぶんや家族や地域の歴史を題材に、4 日間のワークショップをとおして約 2 分間の映像作品を協働的に制作するというものだ。その関係者から直接お話をうかがうのが、今回の調査の大きな目的のひとつだった。2 年前にアスケ・ダムさんと一緒にここを訪問し調査をされた小川さんがコーディネートしてくださった。英国でのデジタルストーリーテリングの展開にかんしては、『社会情報学研究』誌 9 巻 1 号での小川さんの論文「可能態としてのCATV、そしてパブリック・アクセス──送り手調査をもとに」や『放送レポート』誌(2005)の論考「BBCが探る新たな公共放送像」に詳しい。ぼくの直接のフィールドは放送ではないが、メディア実践とコミュニティという観点から見て、大きな示唆をうけた。いずれなにかの形で触れることになるかもしれない。
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コペンハーゲン
- Mar 14, 2007 08:38
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コペンハーゲンに来ている。三泊目の夜だ。かかわっている研究プロジェクトがコペンハーゲン大学でセミナーとワークショップを開いたためである。
コペンハーゲン大学のすぐ隣にITユニバーシティがある。デンマークでいちばん小さな大学なのだそうだ。セミナーの終わったあと見学に連れていってもらった。内部に入ってびっくり、ぼくが非常勤で教えに行っている公立はこだて未来大学そっくりの空間構成である(上写真)。山本理顕さんも顔負けといったところだ。IT技術を活かして、教育・研究にアートとビジネスをくわえた地域のインキュベーションセンターの役割ももっており、かなり成功しているという。岐阜の IAMAS などが本来めざしていたような方向だろう。北欧内部では国境を越えて活発に協働し、アメリカやアジアに対抗しつつ連携する。北欧という地域のおもしろさは、地政学的に見ても興味深いものがある。

大学もそうだが、街全体に、デザイン精神が息づいている。格好をつけるためのものというより、日常生活を構成する重要な要素のひとつであるようだ。建物や街路はもちろん、サインシステム、把手、窓枠、デスク、椅子、棚からさまざまな小物類まで、よく考えられたデザインが施されている。上の写真は地下鉄の入口を示す標識。ごらんのとおり、夕闇に映えてたたずんでいる。滞在しているホテルは街の中心部にあるが、このあたり、街角でも清掃が行き届いている。反面、徹底して管理された空間であることも強く印象づけられる。
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