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エリック・クラプトン
俺ん家にて

函館では夜は居酒屋俺ん家にいく。
五稜郭の交差点をすぎて道をくだってゆく。道にはスピーカーで広告が放送されている。なぜか「お祭りマンボ」が流れている。暗い空に白く浮かびあがる五稜郭タワーが近づくと、店はすぐ。純和風の炉端焼きだが、マスターは音楽、わけてもエリック・クラプトンが大好きで、その手の展示と音楽とが、魚の焼ける煙とともに店内を満たしている。
夜ごと3-4本のビデオを見せてくれる。どうもぼくに見せたいプログラムが組まれているらしい。清志郎のライブであったり、この6月のハイドパークやリバプールの野外コンサートであったり、ロックの歴史のドキュメンタリーであったりする。
昨晩は、なんのはずみかロイ・オービソンはいいですねという話になり、するとマスターは、かれが1988年に亡くなる直前に結成された伝説のバンド「トラベリング・ウィルベリーズ」のドキュメンタリーを見せてくれた。
閉店となって外へ出、暗い裏道をホテルへ歩く。函館滞在もまもなく終わりだ。
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Char@炉ばた 俺ん家
- Sep 15, 2007 08:49
- メディア論的に考える | 北海道 | 旅する

函館滞在中は「炉ばた 俺ん家」に通うことに決めている。五稜郭近くにあるこの店は、昨年見つけた。店構えも内装もメニューも、なにもかも完璧な炉端焼きの店なのに、流れる音楽はエリック・クラプトンだ。それを狙いでやっているのでないのが、またいい。
毎晩、音楽のメニューも用意されている。今回は、マスターお気に入りの番組の録画。「Char Meets ????: Talking Guitar」という、フジテレビがCSで放送している番組だ。
チャーが気になるギタリストをゲストによび、トークとセッションを繰り広げる。といっても、前半ひたすらチャーがしゃべりまくり、途中からひたすらふたりのセッションがつづくといった風情で、かなり濃い。ゲストによって、演奏するセッションのテイストがまるっきり異なる。渡辺香津美の回はずいぶんジャジーだし、泉谷しげるのときはひたすらストロークである。坂崎幸之助の回はたのしく、ジェイク・シマブクロの回は圧巻だった。
観ていて愉しいが、つくっているほうも愉しいだろう。とはいえ予算はなさそうだし、放送も不定期らしいから、苦しいことも多いに違いない。苦しいが同時に愉しいという葛藤状態のことを、ある先生が「くるたのしい」と表現した。この言葉は、この番組の作り手たちの気分によく当てはまるのではないか。
くるたのしさが発するオーラを、地上波のテレビ番組から感じることがなくなって久しい。この番組の印象にいちばん近いものはなにか。ぼくの感覚のなかで探しだすとすれば、それはある種のラジオ番組か、ある種の雑誌である。
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ホッケうまいか

「函館居酒屋ひとり悉皆調査」と称して、居酒屋めぐりをした。悉皆(しっかい)とはしらみつぶしの意味だ。以前に、建築史家の村松伸さんのバンコク調査にお供させていただいたときに教わった。
調査のかいあって(?)、今年は気に入った店が見つかった。五稜郭の交差点から少し歩いたところにある炉端焼きの店だ。炉端焼きといっても、ただ焼き魚がうまいだけではない。マスターが大のエリック・クラプトンのファンなのである。したがって、店内の壁という壁にはクラプトンのポスターが貼られ、大画面ディスプレイには、マスター秘蔵のクラプトンお宝DVDが流れている。そしてマスターは、暇さえあればディスプレイのクラプトンにあわせて、手許のギターを弾く。そういう店のカウンターの隅に腰掛け、地元のお客さんたちの会話を聞くともなしに聞くのは、このうえなく居心地がいい。けっきょく、今回の函館滞在中は夜ごとその店に通ってしまった。
三日目の晩のことだ。マスターのすすめでホッケを焼いてもらうことにした。すると常連客なのだろう、少し離れたところに座っていた洋なし体型の白ポロシャツのおじさんが、マスターに声をかけた。
「ホッケはシマホッケに限る。脂がのっていてうまいからな。一度シマホッケを喰ったら、もうマボッケは喰えない」。
とんでもないことを言いはじめたのだ。いま目の前で炭火に焼かれているぼくのホッケは、むろんマボッケのほうである。マスターはあわてて反論する。「シマホッケは脂っこくて好きじゃない、マボッケのほうがうまいっしょ」。しかし洋なし白ポロシャツは頑として譲らない。「いや、ホッケならばシマホッケだ、おれはもうここ何十年もマボッケなんて喰ったことがないさ。喰いたいとおもわんもんな」。
マスターの応戦むなしく、洋なし白ポロシャツのシマホッケ優位論が場を圧倒した。ぼくは黙っていた。そのうちに、網の上でマボッケが焼きあがった。ほどなくしてマボッケは皿に載せられ、カウンターのぼくの前に運ばれてきた。洋なし白ポロシャツは口をつぐんだ。ぼくは左側約3mの距離から注がれる、かれの強力な視線を感じた。
ぼくがマボッケの身を一切れ、口に運んだ。マスターがぼくに訊く。「うまい?」間髪いれず、ぼくは答えた。「うまい!」。じっさい、うまい。
するとおもむろに、洋なし白ポロシャツはマスターに語りはじめた。「シマホッケはさ、あたりはずれが大きいんだよな」。ようやく事態に気がついたかれは、いきなりフォローに入ったのである。かれが帰ったあと、マスターとふたりで、いいひとだねえと語りあったことは、言うまでもない。
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