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映画

映画と乗り物とコミュニケーション

先日執筆した原稿のなかで、「コミュニケーション」という言葉について、ちょっとだけ触れた。

この言葉は、いまでは、情報や思想を交換する行為やそのための手段や媒体という意味で、一般には理解されているだろう。(媒体のニュアンスがより強調されれば「メディア」と言われたりするかもしれない。)

ところが、このような用法にかんして、ウィリアムズはひじょうに興味深く、かつ重要な指摘をしている。英語のcommunicationは、17世紀末から20世紀前半まで、今日でいうtransportation(物質的運輸)という意味も含んでいたというのだ。

ちなみにcommunicationの原義は「共有すること」である。鑑みるに、この用法が存立しえた基盤には、何かを共有するには物質的な移動が不可避にともなうという認識があったことが示唆される。

裏返していえば、物質的移動なしに何かを共有する仕掛けとして、20世紀的マス・コミュニケーションというものが想像されてきたということでもある。

このような話は、ぼくの思考において、その基盤の一部をになうことになる。つねづね主張していることだが、「メディア」というものを考えるうえで決定的に重要なのは、「映画」と「乗り物」なのだとおもう。


映画というテクノロジー経験

長谷正人先生の『映画というテクノロジー経験』(青弓社)が刊行されました。これまで書かれた映画にかんする論文を集めたもの。その昔ぼくが編集者をしていたころに書いていただいた論文も収録されています。が、そういう個人的感慨はともかく、狭義の映画研究にかぎらず、いろいろな意味で重要な本だとおもいます。


映画『トイ・ストーリー3』

「トイ・ストーリー」シリーズの最終回(?)の主題は、成長と別離だ。

子どもから大人になること。そこで不可避に生じる別離をめぐる葛藤。それを巣立つ側と見送る側とがそれぞれのやり方で受け容れ、乗り越えてゆくこと。成長と別離はアメリカの現代文学がくりかえし描いてきた主題であり、ハリウッドでも若者向け作品を中心にやはり同様に反復されてきた。この主題にピクサーがどう挑戦するかが、本作品の見どころである。

結論を喩えていえば、一勝一敗といったところか。まず一勝のほうから。

主人公の人形は、大学入学を控えるまでに成長した持主の少年と、いよいよ別離を覚悟しなければならない時期をむかえることになった、という設定から物語が始まる。わかれたくない、一緒にいたい、という気持ちと、しかしそこにはじぶんたちの居場所はないという現実とのあいだで、少年も、おもちゃたちも、それぞれが烈しく揺れ動く。おもちゃと子どもとは、もとより棲む世界が異なっている。おもちゃはいつまでもおもちゃであるが、子どもはやがて大人になる。両者の蜜月はいつか終わる。それをそれぞれの仕方で受け容れることが、つぎのステップへつながる。

その意味でこの作品は、ウィニー・ザ・プーの変奏、もしくはリベンジである。

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映画『アリス・イン・ワンダーランド』

109分間、存分に味わうことができる。焼け跡を眺めているような気分を。

スクリーンを徘徊するのは、高度な映像技術ばかり。アリスの物語のwonderな部分をとことん陳腐に解釈し、よくある魔法世界の冒険活劇に矮小化しただけだ。アリスであることの必然性などどこにもない。派手なVFXとは裏腹に、設定も人物も物語も手垢まみれだ。

「実在」にたいするおどろくほどナイーヴな世界観が、この物語の脆弱な土台をなしている。アリスの「成長」とは、彼女にとってなんら必然性のみえない者を、正義の名の下に殺すことだ。その手の構図は、もうすっかり乗り越えられたのだとばかり思っていたのだけどねえ。剣を手にした瞬間に彼女の唇にうかぶ笑みは、もう立派な殺戮者のそれである。

アリスの「優秀さ」を示すものとして描かれるエピソードも、ナイーヴさの度合いにおいては負けていない。たんなる帝国主義の尖兵でしかないからだ。その彼女が次に搾取におもむこうとする先は、どこあろう中国である。

むしろ21世紀におけるウォルト・ディズニー・カンパニーの欲望がもっとも端的かつナイーヴに表現された作品というべきであろう。


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