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車窓
列車のさみしさ
ゼミ旅行に行ってきた。今年は北海道、昨年が長崎だったから、ちょうど逆。「この時期安いのは寒いところだよ」と、旅行代理店に相談にいった合宿係が、カウンターのおにいさんに勧められた結果なんだそうである。
ゼミ生たちは、ヒートテックにダウンジャケットという、南極観測隊のような装備で札幌に乗り込んだ。ところが到着した札幌は、さっぱり寒くなかった。路上の雪は溶けかかり、白いはずの雪には泥が付着して汚れており、まるで春先の北海道である。夕方には降りはじめたが、雪ではなく雨。この日、最高気温は8度になったのだと、あとで知った。「ふくろう亭」でジンギスカンを食べたあと、ホテルへ戻るころにはずいぶん冷え込んできた。
翌日は雪。バスではるばる旭川まで遠征し、旭山動物園へ。行ってみると、おどろいた。気温は昨日とうってかわって氷点下、山の中腹にあって半ば吹雪になりかかっているにもかかわらず、続々と観光バスがやって来る。バスからは、モコモコに着込んだ年配旅行者たちから、この寒いのにブレザー姿の高校生までが、どしどしと吐きだされてくる。この時期の北海道の観光資源といえば、スキーとカニとガリンコ号ぐらいしかなかった時代からすれば、脅威的な集客力である。
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車窓都市
- Jun 13, 2010 11:32
- アトラクションの日常 | メディア論的に考える
名古屋芸術大学で特別講義をしてきた。『アトラクションの日常』を読んでくださったという津田佳紀先生からお誘いいただいたのだ。とてもありがたいことである。
名古屋駅から名鉄にゆられて15分ばかり。その大学のあるあたりは、かつて西春町とよばれていた。それがいまでは駅名に痕跡を残すのみで、「北名古屋市」と称しているという。その名前についてよそ者が忖度することはつつしみたいが、そうした改名が、近隣の大都市の知名度に寄生することばかりに目がいった結果、いっさいの歴史的文脈というものを消去してしまっているくらいのことは、誰にだって想像がつく。そしてそんな地名がいまや日本じゅうにあふれている。歴史性をはぎとられて、時間の流れない世界という点では、郊外、もしくはテーマパークみたいなものだ。娘に源氏名みたいな名前をつけてしまうようなタイプの欲望とも近い。
『アトラクションの日常』のなかでは、名古屋という都市のあり方が重要な役まわりをはたしている。ぼくにとって名古屋という街は、そこから離れるべきものであると同時に、否応なくその文化に根ざしていることを意識せざるをえないものでもある。その名古屋の都市的様態を、同書のなかで、バザール都市としての東京と対比しながら「スーパーマーケット都市」と書いているが、これは車窓都市といいかえてもよい。名古屋は──少なくとも戦後のある時期以降の名古屋は──全域が「郊外」として編成された大都市であり、「郊外」という空間は、どう考えたって車窓的なのだ。
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すべてがネタになる
- Apr 30, 2010 09:49
- アトラクションの日常 | メディア論的に考える
事業仕分けのネット中継が話題である。動画中継も大規模におこなわれるようになったものの、あらためて思ったのは、Twitterが実況にいかに向いているか、である。これでキャノンボールみたいなことをやったら、さぞ面白かろう。
ところで、こうしたネット活用は、しばしばネット民主主義と結びつけられて語られる。もとより「パソコン文化論」は伝統的に、「草の根民主主義」の神話を共有してきた。電子テクノロジーによって実現する、対等な個人による討論の場──いわゆるデジタル公共圏である。「ネット論壇」などという言い方も、このような発想の上に成立している。
たしかに、事業仕分けのネット中継などをみていても、そこにネット民主主義的を夢みたくなるような何かしらの芽が含まれていると、感じられないでもない。そしてそのことを感じとった既存のマスコミはジャーナリズムの既得権益をおかされるように受けとるだろうから、これを叩いたり、あるいは逆にすり寄ったり持ちあげたりもするだろう。だからそれらとは一線を画したところで、ネット民主主義的可能性を批判しつつ擁護することは、おそらく重要なのだ。
しかし、それと同じくらい重要なのは、たとえば事業仕分けネット中継にたいして、ぼくたちが「実際のところ」どんなふうに接していたかをあらためて見つめてみることだ。
なぜぼくたちがあの中継を眺めていたかといえば、ようするに、面白かったからだろう。一部の生真面目な層はともかく、全体としてみれば、事業仕分けは「娯楽」として見られ、語られてきたはずだ。「娯楽」で語弊があるのなら「ネタ」といったほうが適切かもしれない。
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トロリー・ソング
- Feb 23, 2009 12:16
- アトラクションの日常 | ミュージカルという問題 | メディア論的に考える | 執筆の余白 | 日々のエッセイ | 映画を観る
先週来、ぎっくり腰である。
2月の中旬は毎年必ず体調を崩すのだが、今年は大丈夫そうだ、と油断したのがいけなかったのかもしれない。ある日どうも椅子の姿勢があわないなとおもっていたら、翌朝には腰が伸びなくなっていた。
さいわい今回はさほど深刻ではなく、とりあえず立つことはできた。ただ、痛くて直立できず、進化に失敗した類人猿のような恰好でしか歩けない。だいぶよくなったものの、それでも外へ出るのはまだ厳しい。だから日がな自宅で執筆している。もちろん、遅々として進まない。
執筆のために、ここ数日でジュディ・ガーランドの「トロリー・ソング」の場面ばかり何十回も観た。映画『若草の頃』(1944年)のなかのシーンである。トロリーの吹きさらしの二階でガーランドがうたうのだが、トロリーの速度や揺れと相まって、じつに示唆的であり、ミュージカル映画史上に残る名場面だ。授業で学生に見せたりしつつ、いつかこの場面について書きたいとおもっていた。
あれこれ調べているあいだは夢中だが、椅子から立ちあがろうとすると、じぶんが病人である現実に引き戻される。
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