牛すじを煮る年の瀬

家族が名古屋に帰っている。だから市川にはぼくひとりだ。正確にいえば、猫のてんてんとふたりである。溜まりに溜まった仕事を片づけねばならないので、残念だが遊んでいるわけにはいかない。といいながら、おもうように仕事がすすんでくれないのは、いつものことだ。

ずっとPowerBookに向かっているのも精神上よろしくないので、煮込みをつくることにした。冬場わが家は薪ストーブを焚いて暖房するから、煮込み料理はお手のものだ。たまたま牛すじが手に入ったので、三度茹でこぼしたのち鍋に入れ、水を張ってお酒を少々混ぜたら、ストーブの天板に載せておく。それだけでいい。

むずかしくはないけれど、時間だけはたっぷり必要だ。分とか時間の単位ではない。二日や三日はかかる。その代わり、ほかの方法ではどうやっても出せない味に出会うことができる。だから、ここであわてたり焦ったりイライラしたりしないのが、薪ストーブ調理のコツなのだ。夜、屋根をたたく雨音と、鍋のぐつぐついう音とがアンサンブルを奏でる。料理ができるまでの時間をどう味わうか。それもまた料理することを織りなす重要な要素なのかもしれない。

味つけをどうしよう? しょうゆ味、塩味、トマト味……どうとでもできる。八丁味噌を溶いて、名古屋ふう土手焼きにしてもいい。明日の気分で決めるとしよう。

2007年の更新はこれでおしまいです。お読みくださって、ありがとうございました。みなさん、どうぞよいお年を。

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