失せもの

運転免許証を紛失した。いかに粗忽者であるとはいえ、その種の失態はわりにしないタイプの人間である。めずらしいことだ。

盗まれたのではなく、明らかに落とした。場所は不明。朝うちを出てから晩までのあいだにどこかで落とした、という以上のことはわからない。帰宅して気がつき、あわてて警察署に電話して、紛失届をだした。

そのあと幕張の運転免許センターへ行き、再交付してもらってきた。いつものよれよれの恰好で行ったら、そのまま写真を撮られて免許証に映し込まれてしまった。パスポート同様ICカード化したというのだが、免許所持者が専用機械で読み出せる情報は、わざわざ電子的に登録せねばならぬ必然性があるともおもえないようなものだ。なにか隠し情報でもあるのかね、と勘ぐりたくなる。

一年生向けの授業で、予定していた内容をやめて、清志郎のビデオをみせることにした。芸術学科なのだから、当然の措置である。訊けばほとんどの学生が、かれの名前を知っているし曲もちらりと聴いたことはあるけれど、詳しくは知らない、といった程度。まあ、そんなところだろう。上映中、学生一名が不明の理由により退室。あれは何なのかしら? ビデオをみせるのはいいが、油断していると、こちらの目にうっかり涙が浮かんできてしまいそうになる。えーい、熱いぜベイビィ。

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