学級閉鎖

学童に《くんくん》をお迎えにゆくと「また学級閉鎖だよ!」と叫んでいる。つい一週間前まで学級閉鎖だった。これで二度目である。

やれやれ、また当分外へ出られない。学級閉鎖になると学童も登園停止となる(まあ当然の措置だ)。子どもをひとりで置いておくわけにもいかないので、親が予定をやりくりして在宅していなければならない。《あ》もぼくも、もうこの二カ月ほどじぶんのために外出することができていない。むろん映画館にも行けない。拷問である。

市川市のばあい、新型インフルエンザに罹患した児童が同時期にクラスで2名となったところで学級閉鎖の対象となる。早めに閉鎖して感染の拡大を防ぐという趣旨であろう。まだ「新型」ではなく「豚インフルエンザ」といわれていた春から初夏にかけて、成田空港で物々しく防疫して国内へのウイルスを侵入を水際で阻止するのだといっていた、あの発想と同じである。

その方針は、たしかに初期の段階では一定の効力があったかもしれない。感染拡大の速度をなるべく遅くするというのは、公衆衛生的には基本であろうからだ。しかし成田の、あの異様としかいいようのないほど物々しい水際撃退作戦によっても、けっきょくのところウイルスの侵入を完全に防ぐことなどできなかった(まあ当然であろう)。同じように、早期の学級閉鎖によって蔓延を防ぐという方針は、当初はともかく現段階ではその目的を果たしているとはいえまい。もし成功しているのなら、隔週で同じ学級が閉鎖するなどという事態は回避できているはずだ。

むしろ逆に、しょっちゅう学級閉鎖をしなければならなくなる弊害のほうが大きくなっているのではないだろうか。すでに二度の学級閉鎖を経験している《なな》のクラスでは、45時間分ほどの授業の遅滞が生じているという。毎日15分ずつ延長すればどうにか年度内に追いつけるというのだが、この先三たび学級閉鎖に追い込まれないという保証はどこにもない。

だとすれば、学級閉鎖についての基準を見直してもよいのではないか。具体的には、1クラス2名という現行の基準を緩和すればよい。考え方としては、水際撃退ではなく、同時期に発生する罹患者の規模が学級運営に支障をきたすほどかどうかという観点から判断するという方向へシフトするのである。

じっさい《なな》のクラスではもう児童の1/3は罹患済みであるという。かれらは学級閉鎖しようがしまいが、同じ型のインフルエンザにはもうかからない。にもかかわらず学級閉鎖となってしまえば、ただ一方的に登校する機会を奪われるということになる。もはや一定程度に感染が拡大してしまった以上、児童をウイルスから完全に防衛するという発想にこだわるよりも、罹患した児童が発生したあとどう対処するかという方策をしっかり確立したほうが実質的だろう。

といっているうちに、また電話で連絡網がまわってきた。こんどは《みの》のクラスが学級閉鎖だという。9月以来これで3度目である。どうやら学校現場は新型インフルエンザにすっかり振りまわされているらしい。

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