いくらと木の枝

10月に入ったばかりのある日、島牧から鮭が届いた。先月ぼくが訪れたときは、海水温が高いということで、例年になく不漁だという話で、じっさい川面に目を凝らしても鮭の姿は見られなかったのだが、ここへ来てようやく漁が始まったという。わりあい豊漁らしい。

届いた鮭はトロ箱に収めるために尻尾が落とされただけだった。目はまだきれいで、鮮度が高いのは明らかだった。

雌のほうのお腹をひらいて内蔵をとりだそうとした。すると、どうしたことか、黒くて細長いものがあらわれた。木の枝のようだ。すっかり真っ黒になっている。とりだしてちょっと握ったら、ポッキリ折れてしまった。写真はその先端部である。

まちがって呑みこんでしまったものか。でも内臓から出てきたわけではないから、えらから入り込んでしまったのだろうか。

いくらもつくる。今回は塩味でいってみたい。

雌のお腹からとりだした筋子を、まず金網でしごいてばらし、よく洗う。それから、昆布でとっただし汁に塩をかなり(大丈夫かと気になるくらい)大量に投入し、酒を入れて日にかけ、沸騰させてアルコールを飛ばしたのち、粗熱をとる。醤油は香りつけ程度。先ほどのいくらが浸かる程度にボウルに注ぐ。あとは冷蔵庫で寝かしておくだけ。一日に一度かきまぜてようすをみるといいのだが、そのあたりは飽き性のぼくに代わって《あ》がやってくれた。

一週間もすると、写真のようないくらができあがる。一尾のお腹から出てきた筋子で、これだけの分量になる。とても一度に食べきれるものではないので、小分けして冷凍しておく。

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