幌延深地層研究センターを見にゆく 3/4

1時間ほどでPR施設を駆け足に見学したあと、更衣室へ。坑内に入るために着替えをする。

青いツナギ、反射ベルト、ヘルメット、長靴、軍手、懐中電灯のフル装備。装備は備え付けてある。ツナギは一般の服より小さめにできているらしく、ひとサイズ大きいものが適合した。

デジカメやビデオを持参することも可能だ。ただしストラップで首からぶらさげておく態勢をとらなければならない。ポケットにものを入れたまま入坑することは厳禁。万が一坑内で何かを落としたら、地下350mまで落下するばかりか、大事故につながる怖れがあるからだと説明をうける。

装備が整ったら、ゆめ地創館前に横付けされたバスに乗って、東立坑の入口へ向かう。入口ではIDチェックを受け必要があるのだが、今回は事前に登録済みということで、係員の前をそのまま通りすぎるだけだった。

坑道見学を引率・解説をしてくれるのは、ここ幌延で地層処分の研究にたずさわっておられる研究者の方。のちほど名刺までいただいた。幌延に駐在する研究者は70名以上、地球科学関係の諸分野から機械や電気の工学にいたるまで、さまざまな分野の研究者がいるそうだ。

地下へ降りる前に、掘削土(ズリとよばれる)が集められている場所を見る。これらは、センターの近くのズリ置き場に集積される。予定されている20年間の研究期間が終了したのち、調査坑道を埋め戻すために使用されるのだという。どういうわけか、掘り出したズリだけでは不足する計算になるそうだ。

いよいよ調査坑道へ入坑だ。東立坑の「人キブル」とよばれる小さなエレベーターに乗り込む。解説の方のほか、ぼくたち見学者5名、実際に掘削作業を請け負っているゼネコンのジョイントベンチャーの現場担当の方1名の、計おじさん7名がキブルに乗り込んだ。

鉄網でできた簡素なリフトは満員である。ものすごい音をたてて下降してゆく。あっというまに調査坑道に達する。最初に地下140m、ついで250mの坑道へ入った。

立坑をつなぐ横坑は、ところどころ鋼鉄製の壁で区画されていた。船舶や潜水艦の防水区画と同じように、万一のさいの被害を最小限にくいとどめるための区画だろう。

その重い扉をあけると、その先には同じような横坑がつづいている。さらに何本か、左右に分岐して盲腸のような短い横坑が伸びて調査坑道を構成していた。各所にさまざまな機械装置がおかれていた。説明用のパネルも展示してある。定期的にひらかれる今回のような見学会や、大臣などの視察のさいにつかわれているようだ。震災以後、各テレビ局も取材に訪れたという。

説明によれば、地下深部におけるプレイヤーは三人しかいない。「岩、水、ガス」だ。調査坑道では、壁や床にボーリングして、これらのプレイヤーそれぞれの挙動や、相互の関係について調べられているという。

ボーリングした脇から水が吹きだしている箇所がある。見学者にはこの水を飲んでもらっているという。ぼくも飲んだ。しょっぱい。少し鉄の味がある。これは地層が堆積したさいに巻き込まれた水であって、海水が浸透してきたものではないのだという。このあたりの地層は200万年前のものだという。つまり200万年前の水、ということか。

下の写真はコンクリートが四角くはがされた箇所。奧に剥きだしになっている壁が200万年前に堆積したという地層だ。

床におかれていたパイロンをよける。すると、床にボーリングの穴が穿たれていた。水がいっぱいまであがっており、ぶくぶくと気泡がでていた。メタンガスだそうだ。

メタンガスは周知のとおり引火しやすい。そのため掘削作業の機材は防爆仕様であるという。

ちなみに掘削は24時間、昼夜二交代制で休みなくおこなわれている。この態勢で、一日に1mずつ掘り進むのだそうだ。

工学的な研究もおこなわれている。坑道はコンクリートで固められているが、pHがもとの地層におよぼす影響を考慮し、アルカリを低めにしたコンクリートを開発して、それの実施実験をおこなっているところもあった。

その4につづく。

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