中国・四国ぐるり2900km その6 最終回

浜坂から余部へ日本海沿いの険しい断崖をトラバースする兵庫県道260も、Wには良い道だった。

ツーリングマップルでは「極狭小」と注記されている箇所なのだが、四国を走った人間ならば、それはやや大げさにおもわれる。ただ、路面に苔が生えていたり、落石があったりと、それなりに荒れてはいる。交通量はほとんどなかった。

「御崎」と標識には記されていたが、そこに余部灯台があった。日本でもっとも高い場所に建っている灯台である。二番目が、北海道の島牧の近くにある茂津多岬の灯台(建物の高さまで含めればこちらのほうが高い)。これでワンツーを制覇したことになる。

有名な山陰本線の余部鉄橋は、以前におきた転落事故のあと、コンクリート橋に架け替えられていた。古い鉄橋は解体され、跡地を公園にする工事中のようであった。

こちらは丹後半島先端の経ヶ岬の灯台。駐車場からやはり15分ほど山道を歩く。杖を突いたおじいさんに追いついた。東京のひとで、灯台めぐりをしているのだという。ほかに城跡めぐり、寺めぐりなど、いろいろなものをめぐっているらしい。記念写真を撮ってあげた。

奈良から伊勢へ抜けるR368は伊勢本街道。途中、たいへんすばらしい杉林を抜けてゆく。道の駅美杉で、地元のセロー乗りのおじさんに声をかけられた。この先の峠(仁柿峠)は狭くて険しい、セローでも怖いくらいだ、Wではやめといたほうがいいといわれた。たしかに「大型車通行不能」の警告が掲げられていた。

峠にさしかかる。なるほど狭小で急峻だ。だが、ゆっくり走れば問題なし。ただし、それはバイクの話だ。クルマどうしの離合は、ちょっと大変そうだった。

鳥羽から伊勢湾フェリーで伊良湖へわたった。伊良湖港近くで、船のすぐ横をシュモクザメが泳いでいるのを見た。水中を視認できたのは、偏光サングラスのおかげかもしれない。

ちなみに、柳井→松山の防予フェリーでも伊勢湾フェリーでも、バイクの固定方法は、シートに毛布をあてがってロープで固縛し、車輪止めを併用するというものだった。写真は防予フェリーの緊縛ぶり。どちらの便でも、バイクはぼくのW一台きりだった。

伊良湖からR42で渥美半島を東進し、R1へでたら、あとはバイパスを走り継いで帰った。トラックだらけで流れも速い。忘れたころに信号があらわれるのと、片側1車線の区間が長いことをのぞけば、ほぼ高速道路である。伊良湖は晴れていたのに、R1の静岡県区間は黒雲に覆われていて、いつ降られてもおかしくない気配だった。けっきょく降られなかった。

由比で食堂「さくら屋」に入った。さくらえび定食(980円)を頼んだ。生のさくらえび、茹でたさくらえび、さくらえびのかき揚げ、そしてさくらえびとあおさのお澄ましと、さくらえびづくし。びっくりするくらいおいしかった。

さくら屋のおばさんの「お気をつけて」の声を励みにR1を東進する。

だが、R246に入り、さらに松田から先の区間にかかると、地獄の無法地帯のような様相を呈しだした。ちょうど夕方のラッシュの時間帯に重なったこともあり、溢れんばかりの自動車で渋滞し、一向にすすまない。のみならず、その隙間をスクーターが猛烈な勢いですり抜けしてゆく。渋滞で流れが止まっているときだけでなく、流れはじめてからも、躊躇なく突入してゆく。まるでそこにスクーター乗りにだけ見える専用車線があるかのようだ。端でみているほうが怖い。こういうのは、やっぱり苦手だ。

ようやく長津田までたどり着いた。サンクスでこの旅さいごの100円アイスコーヒーを飲み、休憩。あとは都内を抜け市川まで一気に走った。ほぼ予定どおりに帰着した。

おわり。

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