東海テレビドキュメンタリーのお歳暮

「東海テレビドキュメンタリーのお歳暮」と題された上映会がおこなわれている。場所はポレポレ東中野。2007年以来、同局は阿武野プロデューサーの下でドキュメンタリー作品を劇場版の形で公開してきた。その既存の15作品がまとめて上映されている。年明けに公開予定の新作のプロモーションという位置づけでもあるようだ。

ぼくはドキュメンタリー映画愛好家ではあるものの、残念ながら同局の作品を全部を観ているわけではない。未見のものもあるし、再見しておきたい作品もある。それで、期間中ときどき出かけている。

名古屋に拠点をおく東海テレビは、中京圏に広域放送をおこなっている。いちおう準キー局という扱いになるとはいえ、それでもテレビ業界全体が苦しくなるなか、同局も先行き明るいとはとても言えない状況だろう。そうした事情が関係していたのか否かは知らないが、キー局が1980年代以降一般的な劇映画の製作に力を入れてゆくのにたいし、東海テレビは2000年代からドキュメンタリー番組を、電波にのせて放送するだけでなく、映画として映画館で公開しはじめた。

その選択は、必ずしも組織としての意思決定によるものではなく、むしろ属人的な形で始められたと仄聞している。だが結果的にそれは、キー局以外の放送局がとりうる道として、きわめてポジティブな選択のひとつだったと言ってよいのではないだろうか(経済的な成功をもたらしたかどうかはともかく)。とりわけ、外側からのプレッシャーによってというよりも、自己規制の無限地獄にわざわざ陥り自家中毒をおこしつつある昨今のマスメディアのありようを見るにつけ。

ぼくが観た範囲でいえば、東海テレビの作品は全体に、ドキュメンタリー映画として、わりに行儀よくできている。行儀のよさは、ドキュメンタリーを「事実をありのままに伝える」ような、ある種のジャーナリズム的手法だと信じるタイプのひとから見ると、高く評価すべきポイントのひとつなのかもしれない。もちろんそれはそれで一定の妥当性はあるとおもうのだが、ぼくの見方はそれとは少し違う。むしろその行儀のよさが危うくなるような瞬間があってくれたほうが、うれしい。だって、映画なのだから。

いくつかの作品、たとえば『ホームレス理事長』や『人生フルーツ』には、そうした瞬間の欠片みたいなものが光るところがある。そういうショットに出会うと、ゾクゾクする。ところが、それでいながら最終的には、わりに行儀よくまとめられてしまう。だからぼくはいつも内心、「そこはもっと壊れていいんじゃないか」とおもいながら、観ている。

上映は12月28日までつづくらしい。ぼくはあと1回ゆくつもり。

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東海テレビドキュメンタリー劇場 公式サイト
『人生フルーツ』『さよならテレビ』『チョ...
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