ヨルダン行きの列車に乗って 1—— People Get Ready (1965)

カラマズーにて(ミシガン州、著者撮影)

前回触れたマーヴィン・ゲイの What’s Going On は70年代に入ってからの曲だが、それよりも前、1960年代にも、公民権運動を背景にした曲は少なくない。

What's Going On のアクチュアリティ
モータウン・ミュージアム(ミシガン州デトロイト、著者撮影)マーヴィン・ゲイの名曲 What’s Going On が、1960年代後半の公民権運動やベトナム反戦運動の高まりを背景に書かれたことはよく知られている。この曲にはこれまで...

ザ・インプレッションズの People Get Ready (1965) もそのひとつ。好きな曲である。YouTubeにあげられている複数の音源のうち、著作権者が承諾しているらしいもの(?)のリンクを貼っておく。

People Get Ready

カーティス・メイフィールドの書いたこの曲を、ぼくはリアルタイムで知ったわけではない。生まれる前の曲だから。けれど良い曲の常として、いろんなひとによってカバーされてきた。山下達郎氏はライブで「蒼氓」を演奏するとき、途中にこの曲を差し挟む(ライブアルバム『JOY』でも聴くことができる)。

音楽はメロディやハーモニーなどさまざまな要素が複合しているものだが、ここでは歌詞に注目しよう。People Get Ready の歌詞はシンプルだ。声高に異議申し立てをするあからさまなプロテスト・ソングではない。「列車」というイメージに託して自由への希求をうたいあげるゴスペル・ソングだ。列車のイメージは明確であるものの、あとは抽象度が高く、いまひとつ意味の輪郭がくっきりしない。

——最初にぼくがこの曲を知ったときにいだいたのは、そんな印象だった。40年近く前のことだ。音楽も英語も歴史も文化も、まだなにもよく知らなかった。

しかし、少し勉強すると、その印象は大きく変わる。シンプルながらも深みのある歌詞だとわかってくる。

ブラック・ミュージックは、いうまでもなく、北米大陸における黒人の歴史と不可分の関係にある。本稿では、こうした視点から、この曲の歌詞の意味を整理してみたい。書いているうちに長くなったので、数回にわけて掲載する。

その2へつづく。

ヨルダン行きの列車に乗って 2——歌詞を訳す
グリーンフィールド・ヴィレッジのはずれから見たディアボーン駅構内留置線(ミシガン州、著者撮影)その1のつづき。People Get Ready の歌詞の意味を整理してゆこう。まず歌詞(英語)の確認だ。ネット...
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