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大平山

毛虫

庭に植えてあるリンゴの木に毛虫が発生した。さっそく退治する。といっても殺虫剤などつかわないから、たいした仕事ではない。いらない割り箸で毛虫をつまんで袋に入れて棄てるだけ。作業が終わり部屋へ戻ってしばらくたつと、左腕のひじの内側がものすごくかゆいことに気がついた。北海道の大平山でかぶれたのかな? そうおもっていたら、《あ》が一目見るなり、それは毛虫だよといって、すぐに抗ヒスタミン剤入りの薬を塗るよう申しわたされた。

調べてみると、件の毛虫はチャドクガというらしい。直接の接触がなくても、毒気針が衣服に付着するだけで皮膚を刺す。刺されたら絶対に搔いてはならない、流水でよく流したのち薬を塗布せよとある。しかし今回はそんな知識もなかったし、そもそも刺されたことにさえまるっきり気づかなかった。ごくふつうに手を洗っただけだ。最初のうちは、虫刺されのつもりで無意識に搔いていたかもしれない。

かゆみはなかなか引かない。もう気が狂うかとおもうくらい、かゆい。患部は赤く盛りあがる。蚊に刺されると、刺された箇所だけでなく周囲も含めてちょうど円墳のようにぼっこり盛りあがるが、チャドクガに刺されたところは、そこだけがポツンと赤く腫れる。《あ》によれば、腫れがひどくなるとそのボツボツが合体し、あたり一面ボコボコに腫れあがるのだという。なんとまあ。

《あ》に命じられ、塗り薬にくわえてザジテンという飲み薬も飲む。鼻炎用とあるのだが、アレルギーを抑える薬だからいくらか効果があるかもしれないという。小さなカプセルを一個飲んで寝ると、なるほどかゆみが少しはやわらぐような気がする。まじめに薬を塗っていたら三日目には目に見えてよくなり、四日目にはほぼ収まった。

そして五日目。リンゴの木にまだ毛虫が一匹残っているのに気がついた。あらためて高枝バサミでつかみ退治した。こんどは長袖長ズボン長靴に革手袋という完全防備で臨んだ。それらの衣服は作業がすんだら熱湯につけてから洗う。毒気針は熱変成して無毒化するらしいのだ。そのあとシャワーで身体をよく流す。対策は万全、とおもっていたのだが、翌朝になるとなぜかやっぱり両腕が激しくかゆい。前回とはちがう場所に発疹がでている。ひじだけでなく、肩や腹のあたりにポツポツと発疹がある。薬は塗ったものの、いまもひどくかゆい。一時でもかゆみを忘れるために、こうして書いている。だから、なるべく書き終わりたくない──のだけれど、どうやら終わってしまいそうだ。


大平山

函館滞在中に福田総理の辞任会見があった。テレビのニュースを見ながら、ちょうど一年前も同じ部屋で同じような光景をテレビで見たのを思いだした。こうなるともはや年中行事である。やれやれ。

さて、今年も島牧へ行った。かつてのように一週間滞在するなど望むべくもない。わずか二泊だけ。その中日に、大平山へ登った。

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大平山は、狩場山とならんで島牧を代表する山だ。まわりが第四紀という地質時代に形成されたのにたいして、ここだけはそれより古い第三紀にできた。そのため動植物に固有種が多いことで知られている。それゆえ近年は盗掘被害がはなはだしい。島牧ユースのガンゼさんは盗掘防止を訴え、専門家と一緒にしばしばパトロール登山におこなっている。

稀少生物の棲むこの山は、同時に登るには険しい山でもある。ルートはほとんど直登。石灰岩質で滑りやすく、藪漕ぎもある。標準タイムは往復とも4時間ずつとされているが、条件によってはそれも厳しい。

ぼくは20年以上前に一度だけ登ったことがある。盛夏だったことも手伝って著しくバテて消耗し、三角点まで行けずに途中で敗退した。あまりにしんどかったそのときの記憶のため、以来いままで再登を試みようとおもわなかった。

今回もまた家族と合流した。小学一年の《くんくん》がついてくる。再挑戦として三角点をめざすのなど無謀だ。ガンゼさんは、第二ピーク(1109m)まで行ければ成功だよという。その手前の岩場がお花畑で、貴重な固有種が見られるからだ。そこまで達せられれば御の字、とにかく行けるところまで行ったらいさぎよく引きかえそうと決めて出発した。
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