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細田守

映画『サマーウォーズ』

はるばる船橋のららぽーとまで行き、おたく系青少年に囲まれつつ『サマーウォーズ』を観た。ゼミ生や卒業生の推薦作である。

細田監督の作品は『時をかける少女』を観たことがあるだけだ。作品自体はよくできていたが、そのときの周囲の盛りあがり方は正直あまり気持ちのいいものではなかった。前作の評価をうけたためか、今回はその傾向がより強まっている印象である。個人的には、アニメか実写かという区別にはなるべくこだわらず、純粋に作品として観ることを心がけようと決めて、ららぽーとまで行った。

そして今回も、よくできた作品だった。事前にあった引き気味の気持ちは、オープニングのタイトルバックで一気に吹き飛びました。これはみごと。(この段落若干加筆。090819)

仮想世界の混乱が現実世界に再帰するというのは、大昔からある定型パターンである。細かい設定から個々のシークエンスのつくり方まで、定型どおり。その意味では既視感ありまくりだが、そうした定型を組みあわせる仕方がうまくてていねいなのがよい。だから、物語がしっかり構築されているし、物語られている。このあたり、近年しばしばアニメ業界からすぐれた作家が輩出されるにあたり、かれらがどんなフィールドで鍛えられてきたかを如実にあらわしているといえよう。

物語上の肝は、信州上田の陣内家という大家族の設定にある。この大家族という人的ネットワークが、電子ネットワーク内に構築されたもうひとつの世界(OZとよばれる仮想世界)と、わたしたちの身体が埋め込まれている現実社会とのあいだを媒介するのだ。それは、先端と現実という二つの極にたいして、伝統というもうひとつの極を挿入する役割をはたす。具体的には、伝統的な服装、建築物、花札などという、いかにも「日本的」なイメージを前景化させた表象物として、現実と仮想という二つの社会の双方に浸透をはかる。(この段落若干加筆。090820)

実際、絵としての表現でも同様だ。情緒たっぷりに描かれる自然や街並み(現実)にたいして、仮想空間内は、村上隆の絵のように意図的に平板かつ線画を強調して描かれる。人物はそのどちらとも異なる、立体感なしにいかにもアニメといった様相で描かれる。それは、現実と仮想、どちらの空間とも完全になじむことなく、どこかで違和が解消されきらない存在である。

ただし、こうした微妙な差異や齟齬は、「家族」やら「守るためにたたかう」といった類いの台詞によって、わかりやすい「メッセージ」に置き換えられて塗り込められがちな傾向はみられる。そもそも「家族」やら「愛する者」やらを「守る」という美辞を「国家」に無媒介的に横滑りさせることで国民を搾取動員することは、国民国家の成立運営上の常套手段だろう。わかりきったことであるとはいえ、もう一度押さえておくべきではないか。

憧れのセンパイとのからみは、全篇これお約束だらけなのが笑える。入浴シーンやら、キューティーハニー顔負けの着せ替えシーンなど、もうサービス満点。それにしても、前作のマコトといい、今回のナツキといい、この手の名前はいまやすっかり女の子用なのね。


映画『時をかける少女』(細田守監督)

細田守監督の『時をかける少女』は、なかなか勇気ある映画化だといえる。

筒井康隆の原作が発表されたのが1967年。それから約40年のあいだに、映画やテレビで何度も映像化され、南野陽子や内田有紀やモーニング娘。といった、そのときどきの人気アイドルが主人公「芳山和子」を演じてきた。こうしたアイドル定番ものの先駆けとなったのは、原田知世が主演し、大林宣彦監督が撮った1983年の劇場版である。この1983年版は昨今伝説的などと持ちあげられていたりもするようだが、当時の原田はまったく表情がコントロールできず、見ているほうがヒヤヒヤと心配になるような演技ぶりであり、しかも脚本は冴えず演出は自己満足的だった。しかし出来のいかんはともかくとして、この大林版『時をかける少女』が、その後につづく当代の人気アイドルをつかった定番作品のひな形となったことはたしかだ。それを、またしても、あえてアニメで劇場映画化するという決断には、多少とも冒険的な判断が介在しただろうと想像される。同作品の映画化は、じつにこれが三度目。『オペラ座の怪人』なみである。
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