科学と絵本

お知らせ二つ。

11月に日本科学未来館で行った座談会を採録したものが、「座談会 “神経神話”が問いかけるもの──科学と社会の関係を考える」と題して『科学』(岩波書店)3月号に掲載された。ダイジェストではあるが、議論のツボはまずまず適切に押さえられている。座談会の記事につづいて、仕掛人・司会のひとり佐倉統先生が、この座談の内容と意義をまとめておられ、わかりやすい。

例の納豆ダイエット捏造番組の騒ぎでもわかるように、科学的言説が、科学者集団の外部で引き起こす問題は、なんだかものすごいものがある。ゲーム脳やテレビ脳はもちろん、水からの伝言とか。で、そういうものをしっかり見きわめるために科学リテラシーを修得しようというのが、ここ数年高まりつつある科学技術コミュニケーション論のひとつの柱である。それは間違いなく大切だろう。と同時に、それだけでは足りない。なぜ、ひとびとがこの手の似非科学的言説を歓迎し、それを増幅させていくのか。そこの部分もしっかり見きわめていく必要がある。啓蒙の光は、必ず闇をともなう。その光と闇の関係を考えていくことも大切なのではないか。これがこの座談における、メディア論の立場からのぼくの主張と提案である。

お知らせの二つめは、延藤安弘先生からご案内いただいた「世界の住まいとまち絵本展」だ。東陽町にある竹中工務店の Gallery A4で、3月1日から開催されている(4月13日まで)。

延藤先生は、住民参加型まちづくり──先生の言葉を借りれば「まち育て」──を早くから唱導してこられた日本におけるパイオニアのひとりである。ワークショップという手法の紹介者・先達でもある。以前に『「まち育て」を育む──対話と協働のデザイン』という御本を編集させていただいて以来のご縁だが、まちづくりのこうした参加型の手法は、いまメディア論でも用いられようとしている。

今回は、先生が長年にわたって集めてこられた絵本のコレクションの展示。シンポジウムや絵本づくりワークショップなども企画されている。また、みずからがかかわった全国各地での実践を、写真と語りで紹介する「幻燈会」もひらかれるという。

ところで、この二つ、まったくの偶然で同時期にぼくのところへ来た話なのだが、組合せてみると案外いけるのではないか。科学リテラシー育成に、絵本づくりワークショップを活かせる余地は多いにあるだろう。