映画『おくりびと』(滝田洋二郎監督)を観た。
庄内の街と自然を舞台に、納棺師の世界を描く。その素材ゆえ、わたしたちの生がつねにさまざまな死と隣りあわせであること、あるいは両者が幾重にも重なりあっていることが、手を替え品を替え反復され、確認される。親切というか、ひじょうにわかりやすい。
物語は典型的な「父との和解」ものだ。伏線の張り方もまた、けっこうミエミエ。だが、それも物語にたいしてまじめに向きあおうという意思だと理解できる。適度に笑いをまぶしつつ、しっかり泣かせる。音楽への依存度も高い。メロディーとドラマのアンサンブル、つまり本来的な意味における「メロドラマ」への志向を内蔵している。
ただ、そうであるならば、チェロ、小石、納棺の道具といった鍵となる物質がたんにそれぞれ提示されるだけでバラバラなままなのは残念だ。これらは形象としてなんらかのしかたで相互に関連づけられているべきなのだ(そう、たとえばサークのように)。
父との和解という物語に傾斜するあまり、登場する女性がそろいもそろって特定の機能だけを貼りつけられた人形のようなのも、いまひとつ深みを欠く。
一場面だけ登場する山田辰夫が印象に残る。