近くの公園はこのあたり限定の桜の名所である。「桜まつり」と称してもう二週も前の週末からイベントをやっている。
だが、開花宣言のあとに冷え込んだため、なかなか花が咲かず、気勢のあがらないまま、ちょっと間の抜けた空白がつづいていた。今週末になって、ようやく九分咲き。例年どおり並木道に屋台が出、園内は真っ赤な顔をした大人でにぎわうことになった。
混雑を避け、午後の遅めの時間に散歩に出かけた。園内の奧のほうに行けば、あまりひとのこない静かな場所がある。
園内の桜の大半は染井吉野だが、そこに混じって数本、大島桜が植えられている。花は白っぽく、開花とともに葉も出るのが特徴だ。上の写真で、ちょうど手前に写っているのが大島桜である。《あ》もぼくも、こちらのほうが好み。
桜とおなじころに咲くのが海棠である。「かいどう」と読む。うちの庭の海棠は、解体されるよその家の庭で廃棄されかかっていたのを貰いうけて移植したもの。初めのうちは、なんという名前の木なのか、誰にもわからなかった。
気がつくと、いつのまにか蕾をふくらませており、ちょっと暖かな日に一気に開花する。おじぎするような恰好をしたピンク色の花を、今年も、たわわに咲かせている。
海棠は梅に似て、樹木の姿形という点では格別魅せられるものはなく、剪定の仕方にも悩まされるのだが、花はいい。もっとも梅とちがって、実は食用にはならないみたいだ。なるにまかせておいて、もっぱら飛来する野鳥に供されることになる。