凧揚げ

《なな》と《くんくん》が凧揚げに行きたいと言いだした。

わが家に凧は二つある。ひとつは数年前に近所のコンビニで買ったデジモンのゲイラカイトだ。《なな》がまず放り投げてみると、たちまち風をつかまえて、あっというまに空高くあがる。あとは青空にピンで留めたみたいに安定してピクリとも動かない。《なな》には何もすることがなく、凧揚げしているのか、ただ土手に呆然と立ちつくしているのかほとんどわからないような状態になってしまった。「退屈だなあ」とぼやいている。

もうひとつの凧は、昨年学童でつくった手づくり凧だ。2本の竹ひごのあいだにビニールを張りわたしただけの簡単な構造である。竹ひごの芯が一箇所折れていたので、前夜《あ》が串で補修してやり、ビニールには《くんくん》がマジックで何やら絵を描いた。

揚げてみると、これが意外によく揚がる。左右のバランスもまずまず。もちろんゲイラカイトほど安定感があるわけではない。ときどき凧が風をつかまえそこね、バランスを崩して落っこちそうになったりする。そのたびにこまめに凧糸を調整しなければならないのだが、それがかえって適度な操作感覚につながる。適切に凧糸を操れば、それに応えて凧も態勢を復元してくれるのだ。

凧揚げしている《くんくん》は、たまらなくおもしろそうな表情だ。いかにも手づくりの、チープというか素朴というか、そういう体裁の凧だから、土手を通りかかるひとからも「いいなあ」と声がかかる。《くんくん》はますます得意そうだ。だんだん寒くなって身体をぶるぶる震わせながら、それでもなかなか帰るとはいわなかった。