パリ散歩旅(1)──10年ぶり

パリに行ってきた。たまたま安いチケットがとれたのだ。安いといっても、それは一人分のこと。今回は《みの》の高校合格記念でもあり、一家総勢で出かけた。すると自動的にそれは人数倍されることとなり、安いはずの航空券もけっこうな値段にふくらんでしまう。ネットで検索しまくりホテルを見つけたが、それとて2部屋必要になる。費用のことは、もうあまり考えないようにするほかない。

家族みんなで海外へ出るのは10年ぶりだ。《みの》が小学校へ上がると、もうそれ以前のようにフライトの安いときを見計らって休みをとることなどできなくなってしまう(古い散歩旅の記録は「さんぽのしっぽ」内の旧サイト・アーカイヴへ)。学校というのは不自由なところなんだと、まるでクリストファー・ロビンの話を聞かされるプーのような台詞をつぶやいているうちに、10年すぎてしまったわけだ。まあ、もちろん実際にはほかにもいろいろ事情があったのだが。

さて、空港からホテルまでは日本からミニバスを予約していったのだが、その運転が粗い粗い。もう「走る」「止まる」の2モードしかない。前のクルマとのあいだに少しでも間があくと思い切りアクセルを踏みつける。関西人顔負けである。

《くんくん》が車酔いをし、ちょうどマドレーヌ教会までやってきたところで、がまんできずに戻してしまう。運転手氏があわてて「車のなかに出したのか?」と訊く。さいわい《あ》が機内でもらったエチケット袋があり、そちらのほうを使用した。だから大丈夫、と答えると安堵し、「どのくらいのフライトだったんだ?」という。13時間、と答える。運転手氏は「13? 分?時間?」とぶつぶつ自問してから、口をすぼめて「ヒュー」といった。

大混雑のコンコルド広場を抜け、セーヌ川を渡り、ホテルに、いったんモンパルナスのほうまで行ってから、リュクサンブール公園近くのホテルに入ったころには午後7時。といっても、日本でいうとまだ午後4時くらいの明るさだ。

ホテルを出て近くを散歩する。近所にパンテオンがある。手間の参道沿いに、Odile Jacobという書肆を見つける。

夕食はホテルの地上階(日本でいう1階)に入っていたブラッスリでとった。子づれにもかかわらず、英語の少し話せるおにいさんがとても親切に対応してくださった。《みの》が「とにかくステーキ」といって、出されるなりぺろりとたべてしまう。ほかの四人は長旅でやや胃がくたびれ気味。ワインも500mlのデキャンタだけにしておく。

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