津波から18年後の島牧

島牧へ来ている。気候は例年より1週間から10日ほど遅いという。峠や尾根筋はまだ白く、木々は新芽が芽吹いていて、山桜が咲いていたりする。海は昨日からずっと凪だ。(写真はいまアップできる環境にないので、後日。)

四半世紀前から変わらないといえば変わらない風景である。だが同時にここは、1993年7月12日に発生した北海道南西沖地震で、津波に襲われて大きな被害をこうむった土地でもある。

ぼくは、ちょうどそのきっかり一カ月前に島牧に来ていたのだが、津波のときには自宅にいて、ニュース番組を見ていた。あまりにもよく見知っている地名が読みあげられるのを、ほとんど身の毛が逆立つような気持ちで聴いていたのを覚えている。

ガンゼさん一家は甚大な被害をうけて、建替を余儀なくされた。そして、友人たちと一緒に、再建の作業を(ほとんど猫の手くらいの役にしか立たなかったのだが)手伝った。呼びかけの手伝いをしたり、津波で流されたアルバムを拾い集めて、写真を水で洗い、貼り直したりした。

あれから18年がたち、前の浜には立派な堤防ができ、国道はあちこちで近代的なトンネルが掘られてルートが付け替わった。

クルマやバイクで通り過ぎるだけなら、ただ海と山の美しさだけが心に残るだろう。ぼくとて大差ない。まあふつうの観光客のひとりに過ぎないのだから。

それでも、津波のときの記憶は、けっして拭い去ることはできずにいる。だからこそ、島牧の美しさがよけいに身に滲みるのかもしれない。