ジョンソン・タウン──アメリカ的サイタマ、サイタマ的アメリカ 1/2

「ジープの機能美展」のあと、入間在住の大学院生ヤダに案内してもらい、ジョンソン・タウンへ行ってみた。

ジョンソン・タウンとは、入間市の中心部にある住宅街だ。あるディベロッパーがその一帯を再開発・管理しているのだという。米国ふうの住宅地イメージをコンセプトにデザインしてみました、といったところであろうか。

そこいらじゅうに溢れている住宅と大規模商店の複合施設を平面として展開させたものだともいえるが、いちおう入間的な文脈がある。現在の空自の入間基地は、かつてジョンソン基地とよばれ、米軍の駐留地だったという記憶に立脚しているからである。

米軍基地に建て並んだ住宅の光景に、当時の豊かな超大国・米国のイメージを重ねあわせた意識の産物ということはいえる。ポストコロニアルな感覚の、きわめてわかりやすい具現ということだ。

ジョンソン・タウンのある土地が、当時の米軍住宅地を直接引き継いだものかどうかは、わからない。だが、そのころの米軍住宅を再利用しているのは事実らしい(その後に新築された建物もあって、両者が混在している)。

幹線道路から敷地内に入ってみる。木造の平屋が建ち並んでいる。どの建物も米国式に、下見板横張りの外壁に白いペンキ塗り、玄関前にはポーチが張り出し、区画を仕切る塀などはない。

ペットショップやレストランや雑貨屋、歯科医院がある。「犬の幼稚園」なる看板を掲げた建物もある。

通りから一本入ると、ふつうの住宅が並んでいる。いかにも60年代後半から70年代の西海岸です、といった雰囲気を全身にみなぎらせているワーゲンバスが停まっていたりする。たしかに、ここはトヨタ・ノアやステップワゴンあたりの出る幕ではない。

看板も標識も英語で記されている。軒先に星条旗を掲げている住宅もある(日章旗は見あたらなかった)。

何匹もの犬に服を着せ、犬に向かって始終話しかけながら散歩する奥さまが通り過ぎてゆく。店に入ると、店主は長髪を束ねて髭を伸ばした中年男性であり、いかにも「それふう」であったりする。

なるほどここは、西海岸や、あるいはマウイのハナあたりの郊外であるように、見えなくもない。意識的にせよ無意識にせよ、そういうものに憧れをもち、その憧れをこの街に重ねあわせたいという欲望をもつひとには、きっとそのように見えるのだろう。そして、だからこそ、映画やドラマやCMのロケにつかわれたりもするのだろう。

しかし、もちろん、ここは奇妙な空間である。イメージにあわせて現実世界のほうを改変してしまったハリボテの街という意味では、ジョンソン・タウンはディズニーリゾートと同類である。でも、それが奇妙さの直接の原因なのではない。この街の奇妙さは、「アメリカ」と「サイタマ」が相互に浸透しあって生み出されていることによる。

 ▼ジョンソン・タウン──アメリカ的サイタマ、サイタマ的アメリカ 2/2へ続く