ディフェンダーのスイベルにグリスを補充した。
スイベルというのは、前輪と車軸との取付部にある球状の部分のこと。小ぶりのハンドボールくらいの金属製の球が収まっており、グリスで満たされている。古くはグリスではなくオイルが満たされていたが、漏れがひどくて変更されたという。
グリスであっても、漏れるときは漏れる。「古いイギリス車はオイルが漏れる」(『カーズ2』)という言葉は真実の半分しか伝えていない。漏れるのはエンジンオイルだけではないからだ。それが英酷車である。ちなみにランクル80のときはここがスイベル状だったかどうかすらよく覚えていない。実質メンテナンスフリーだった。英酷車の対極である。
で、ぼくのディフェンダーもやはり、気づいたら漏れはじめていた。シールが傷んだらしい。初めはこんなものかと思って放置していたが、ミッドランドの野崎さんに、急ぐ必要はないがいずれ修理したほうがいいと指摘された。それまではグリスの補充でしのいでおこう。グリスが切れたら大ごとである。焼き付いてしまうからだ。
ワークショップマニュアルによれば、スイベルグリスには極圧性ちょう度00(EP00)が指定されている。そんなのどうすれば手に入るかわからないので、英国四輪駆動車部品販売というパーツ屋さんに問い合わせてみた。純正品(パーツナンバーSTC3435)と社外品があり、それぞれ2800円と1800円、性能に変わりはありません、という。後者を買った。
作業のやり方について、ネット上に諸先輩方の経験談がいろいろ出ていてたいへん参考になるのだが、細かい部分がいまいちうまくイメージできない。まあ、なんとかなるだろうと、見切り発車で作業を始める。
ハンドルを切って前輪に角度をつけておくと作業しやすい。まずフィラープラグをあける。プラグは凹形にへこんでいる。1/2 3/8sqのラチェットに、ソケットは装着せず、そのまま差し込むと、ジャストサイズだ。ちょっと奥まったところにあるので、エクステンションを付けて差し込み、まわす。初めは固かったが、まもなく開いた。
ヘッドランプの明かりを頼りにフィラーホールからスイベルの内部をのぞき込む。球のきれいな金属の地肌がそのまま見える。やはりグリスが減っているのだろう。
スイベルグリスのチューブの尖った部分をハサミで開封。グリスガンはつかわず、そのままチューブの先をフィラーに差し込み、グリスを注入する。このスイベルグリスは、ヨーグルトと飲むヨーグルトの中間くらいの粘度だ。少し注入すると、すぐにいっぱいになるので、しばらく放置。するとグリスがじぶんの重みで下がっていく。そこでまた足す。これをくりかえす。
何度かくりかえしているうちに、時間をおいてもグリスがさがらなくなった。この時点で、いちおう入るだけ入ったのだろうと判断して作業をおしまいにした。注入量は、目分量で、左右あわせて120gほどだったろうか。
フィラープラグにパーツクリーナーを吹きかけて清掃し、締める。ついでに、まわりにもパーツクリーナーをぶっかけて清掃しておいた。
試しにひと走りしてから、もう一度プラグをあけてみる。プラグの裏に灰色のグリスがべっとりついていた。この中をある程度グリスが満たしているということだろう。しばらくはこれで大丈夫だとおもうことにした。
*追記:初出でラチェットのサイズを1/2と誤記していましたが、そんなでっかくはありません。正しくは3/8sqです。お詫びして訂正します。