先月のこと、車検のためW800をショップに預けにいった。代車として借してもらったのがDトラッカーだ。250ccのモタード。初めて乗る車種である。
車両はキャブ仕様の旧型であった。この季節、まずチョークを引いてからセルをまわし、エンジンを始動する。じゅうぶんに暖機しておかないとバイクは動いてくれない。ひさしぶりの「儀式」だった。
昔はそれが当たり前だった。いまやWさえもインジェクション化し、燃調もコンピューターで制御される時代である。チョークなど、すっかり姿を消している。
Dトラでひとまわりしてみた。もともとオフ車だから車高が高く、足つきは悪いものの、サスがやわらかいので、またがればけっこう沈む。身長167cmしかないぼくでも、実用上はそんなに問題ない。エンジン音はがさつ。ミッションは6速でWより1段多いのだが、低速トルクの分厚いWとちがい、速度にあわせて細かいギアチェンジが要求された。カーブでは、おもった以上にまわり込む。軽快といえば軽快である。
走っているうち、千葉から茂原街道を抜け、気がつくと、九十九里まで来てしまっていた。
長生村の一松海岸で、海をながめた。太陽の位置が低い。この季節の砂浜には、わずかな釣り人の姿しかなかった。
裏道に入って遊んでみた。どんどん奧へいったら、行き止まりだった。Uターンする。そのとき、草むらの向こうに、でっかい建物がちらと見えた。このへんの風景には不釣りあいな、奇妙な風体である。
もしや、とおもった。
県道30に出て南下してみた。周囲には、ザ・千葉的なのんびりした風景がひろがっている。そのなかに忽然と、異形の建物があらわれた。さっきの巨大建物である。
やはりそうだ、とおもった。「幸福の科学大学」だ。文科省から設置認可がおりなかったことで、しばらく前に話題になったアレである。こんなところにあったとは。
最初に見つけた建物が、これだ。さっき草むらから見えていたのは、写真奧のほうに映っている建物の上部だっただろう。研修施設か何からしい。
その南側に「大学」の正門があった。脇に「2015年開学予定」と大書された看板がたっていた。「予定」の二文字がむなしい。
なかをのぞいてみた。
芝が張られ、シュロみたいな木が植えられていた。広大な敷地だ。九十九里有料道路と県道30にはさまれた区画がまるまる敷地になっている。それにしても、英語名もすごいな。
左手に巨大な建物が鎮座していた。「校舎」なのだそうだ。
不思議な印象の建物だった。威圧的なのにハリボテ的なのだ。その意味で、ディズニーランド的であると言えなくもない。
建築の様式も何だかよくわからない。ただ、これと少しだけ似たような構成の建物を、海外のどこかの大学で見たような気がしないでもない。とにかくお金はやたらにかかっていそうである。
何を教えるのかは知らないのだが、ともかく器だけは着々と完成しつつある、ということらしかった。しかしこれ、この先どうするのだろう?