高校野球を観にいく

もう先週のことになってしまったが、夏の高校野球(甲子園)の予選、千葉県大会の試合を観にいってきた。

これまでも通りがかった近所の野球場で見物したことはあったが、今回は初めて応援席での観戦となった。というのも、《なな》(高2)がベンチ入りメンバーとなっているチームの試合だったからだ。

これが二回戦。数日前の一回戦は首尾よく突破したのだが、そのときぼくは『メディアリテラシー・トレーニング』のゲラをかかえ、身動きできなかった。

ぼくが球場に着いたとき、まだ前の試合をやっていた。《なな》の中学時代の先輩が出場していた。一年からレギュラーで出ているという、その先輩のプレーを初めて見た。ぼくが見ているあいだだけで、うまい送りバントを二つ決め、センターから3塁への好送球で走者を刺してみせた。攻守にわたって、なかなかにセンスのよさを感じさせる選手だった。そしてそのチームが勝った。

こんなふうに、今年はあちこちの高校から、直接間接に知っている子たちが何人も出場している。どこまで勝ち進むことができるだろう。

ちなみに千葉は、特定の強豪校が極端に突出するようなことがないため、私立公立入り乱れ、大会は混戦となる傾向にあるらしい。勢力図の移りかわりも烈しいという。出場校数は180近くにのぼり、全国4番目。こちらとしては見応えがあって愉しいのだけど。

さて、前の試合が終わると、ただちにベンチも応援席も入替となった。楽器をかかえた吹奏楽部が、スタンド上段に陣どる。金管とパーカッションのみの編成のようだ。そろいのTシャツを着た在校生たちの応援団もわらわらと集まってきて、スタンドの下半分をあっというまに埋めてしまった。まだ夏休み前だったはずなのだけれど、公欠なのかな。

応援団の男の子たちが、スタンドとグラウンドを隔てるネットに張りついて、なにやら聞き耳をたてている。直下のダグアウト前では、ベンチ入りメンバー全員が円陣を組み、試合前の気合いを入れる場面が始まろうとしていた。指名されて誰かが何かひと言,決意表明みたいなことをいう。応援団たちは、それを聞こうと耳を澄ませていたのだ。そうして、「おお、そう来るか!」などと大きな声でツッコミを入れるのだった。

風が強く吹くなか、試合が始まった。

中盤までは拮抗したいい試合だった。相手はシード校の強豪ゆえ、善戦といってもいい状況だった。

炎天に焼かれながらも、応援団もヒートアップする。対戦校にはチアもいて華やかだったが、こちらは急造の有志応援団ゆえか、そこまでは無理。それでもみんな声をからして大声援だった。エール交換も立派にやっていたし。吹奏楽部の演奏がさりげなく上手なのに感心した。

試合はしかし、途中から登板した3年生投手の制球が定まらず、自滅のような恰好となって、けっきょく敗戦となった。試合後、その投手の男の子は涙がとまらず顔があげられなかった。

《なな》の出番はなかった。つぎはいよいよきみたちの年だ。