エッセイ

自然の風景

息苦しい

このところ息苦しい。世の中が息苦しいのはいうまでもないが、文字どおりの意味である。気管支が腫れ、息を吸ってもなかなか入ってこないのだ。 夜になると、とくにひどい。のどからヒューヒューと音がする。よく眠れないし、眠れば夢ばかり見...
その他の散歩旅

海まで自転車で

秋めいた風の吹く午後、海まで自転車で走ってみることにした。 江戸川左岸(東岸)の土手ぞいには250mおきに標識がたち、海までの距離が記されている。15-6kmも走れば河口に達するはずだ。 鉄道や道路の橋をいくつもくぐって...
エッセイ

毛虫

庭に植えてあるリンゴの木に毛虫が発生した。さっそく退治する。といっても殺虫剤などつかわないから、たいした仕事ではない。いらない割り箸で毛虫をつまんで袋に入れて棄てるだけ。作業が終わり部屋へ戻ってしばらくたつと、左腕のひじの内側がものすごくか...
生活の風景

しゅじゅつごっこ

──きょう、ガクドーで、しゅじゅつごっこした。 え、「しゅじゅつ」って、手術のことかい? お医者さんごっこじゃなくて? ──うん、ちがう。 どんなことするわけ? ──カンちゃんがよこになって、それで、しゅじゅ...
自然の風景

桐の木

銀座のさる百貨店の店頭に桐の木が生えてきた。この夏だけで背丈よりも高く生長した。この先どこまで大きくなるのか。──そんな記事を先日新聞で見つけた。じつはうちもそうなのだ。物置小屋の横に桐が生えてきた。植えた覚えはない。どこからか種が...
自然の風景

夏の終わり

例によって今年もお盆のあいだに夏風邪をひいた。 最初は扁桃腺が腫れる。つぎに腫れが気管支にさがって、ゴムホースを呑みこんだみたいに痛みはじめる。呼吸をすれども空気が入ってこないから頭が痛み、これに背中と腰の痛みがくわわる。大人...
エッセイ

なぜ書くのか

たったいま原稿を一本しあげたところだ。ちょっと特殊な性質の雑誌から依頼されたもの。一般の書店店頭に陳列される類のものではない。とりたてて長くはないこの原稿、おもいのほか執筆が難航した。授業期間が終わってもまとまって時間がとれず忙しかったとい...
ゼミ・授業

雷雨

集中講義ぶじ終了。学生たちは議論をつくし、頭を絞り、多くが土日も朝から晩まで白金に詰めて課題にとりくんだ。その成果は如実に発表の質にあらわれていた。すべての発表が終了すると、学生たちはバタバタと床にひっくりかえった。ほとんど寝ていなかったの...
ゼミ・授業

地震から夏至まで(2)──遅れる

授業を始めて数分後、二人の男子学生が遅れて教室に入ってきた。アボット=コステロのような凸凹コンビである。 遅刻したらひとつ芸をしてもらうと申しわたしてあった。かれらにそのことを思い出してもらうと、うーんといってしばらく黙り込んだあと、...
エッセイ

地震から夏至まで(1)──揺れる

そのとき、ぼくは校庭の端のコンクリート壁に腰かけていた。グラウンドでは運動会の開会式が始まっており、ちらばった生徒たちの体操をするようすをぼんやりながめていた。 突然、じぶんの身体が揺さぶられているような感覚に気がついた。長い周期で、...
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