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桐の木

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銀座のさる百貨店の店頭に桐の木が生えてきた。この夏だけで背丈よりも高く生長した。この先どこまで大きくなるのか。──そんな記事を先日新聞で見つけた。じつはうちもそうなのだ。物置小屋の横に桐が生えてきた。植えた覚えはない。どこからか種がとんできたか、長靴をはいたおじさんが夜中にこっそり植えていったかしたのだろう。

最初は、フキみたいな葉の草が生えてきたなという印象だった。当然雑草だと信じて疑わなかった。《あ》は、こんなところで大きくなられても困るから抜いたほうがいいという。でもこれはこれで、なかなかかわいらしい。抜くのがはばかられ、まあそのうちに……などと油断しているうちに、ニョキニョキと生長して、たちまち物置の屋根よりも高くなってしまった。

ある日、いつも宅配便を届けてくれるおじさんが言った。「こりゃ桐ですね。タンスでもつくるんですか」。え、桐? 雑草だとばかりおもってたんですけど、と答えると「生長が速いから軽くて家具にむいているんです」という。

桐の木がどんな姿をしているのか知らなかったが、とにかくこれが桐なのだ。そういわれても、にわかに木だとは信じられない。茎というか幹は緑色だし、葉っぱは十分雨傘代わりにできるほど広大だ。けれど、このおじさんは無類の園芸好きであり、じつに詳しい。信じないわけにいかない。

ところが先日のこと。朝、新聞をとりにでたところ、この桐の木が根こそぎ倒れているのを発見した。なにしろ樹高はこのひと夏でもう3mはあろうかというほどの伸びっぷりだったから、倒れた桐は隣家の庭にまではみ出ている。引き抜いて処分することにした。

長男がのこぎりで幹を切ると、きれいな中空構造をした断面があらわれた。芯の中空のまわりの部分は木化している。なるほど草ではなく木本性なのだと納得した。やっぱり添え木をして残しておけばよかったかなと、少し後悔した。